川越さん
  1. TOP
  2. 打チ人知ラズ。(わし)
  3. 川越さん


マイホールでジグマを始めてから結構な歳月が流れた。わしが通い出す前からの常連がいまだに居る一方、一定期間通っていたのに気付けば見かけなくなったなぁ~なんていう人も多い。そんな月日を重ねると「地縁」とでも言えそうな繋がりを持つ人が出てくる。

同業者的には、このコラムでたまに登場するタケシが該当する。彼は基本的にST機嫌いだから、ガンダムなどのST機が大好きなわしとは狙う台が異なる。そのためお互いが持つ情報交換により、ホールの全体的な調整状態や稼働状況など、具体的な流れを補完し合い把握できる。わしもタケシも1人で行動しているから、お互いを補完することでウィンウィンの関係になるのだ。


同業との情報交換はまぁありそうな話だが、わしのように長く通うようになると、勝ち組の一般客と話す間柄になることもあるのだ。

新台導入時、わしを含め多くのプロは基本的に様子見に徹するのだが、一般客は新台が大好きだから空席待ちの時間を惜しまず立ち見などをしている。そして空席ができればすかさず打ち始めるという寸法だ。どうしてあのような状況になるのかわしにとっては謎だが、一般客が、あれほど回らない新台にへばりついて打っているのだから、ある程度そこに価値を見出して打っているのだろう。もちろんそれでホールの利益になるのであれば、一般客がどれほど負けようがわしには関係のないことだ。

そう、基本的には新台入替はわしには関係のないことだ。だが、まれにではあるが、新台を想定外に回している時がある。しかし新台に関してわしは情報過疎の状態だから、イレギュラーなことが起こっていても状況が把握できない。そんな時、この一般客がさりげなく新台を回しているという情報をくれたりする。こんな時は同業者に先駆けて優秀台を確保するチャンスとなるため実にありがたい。当然、別の日にわしが持っている優秀台の情報をこの一般客に流し、キチンとお返しをする。これも持ちつ持たれつの補完関係にあたる。


逆に、狙う台が同じ人は、単なるライバルだから口は利かない。仮に台について語り合ったところで情報がダダ漏れになり、行き着く先は狙っているシマの優秀台であろう台の奪い合いになるのがオチ。結局、こんな関係になるなら初めから関わらない方が良い。これはパチプロを続けてきて身に付けた知恵でもある。


さて、普段から会話するほとんどが上記以外の人だ。何気に隣り合って、演出を見ながら雑談をしているにすぎない。ホールでのコニミュケーションは、この何気ないバカ話から始まる。今回は、このコニミュケーションが妙な方向に派生した話をしてみたい。

本名まではさすがに知らない。しかし、のちに埼玉県川越市出身と聞いたので、勝手に「川越さん」と呼んでみたい。この川越さんとは、美空ひばりの時にはすでに話をしていた記憶があるから、かれこれ4年以上の付き合いになる。基本スタイルは、昼過ぎに現れて2時間ほど暇を潰して帰る普通のおばちゃんだ。

そんなおばちゃんの背景は、社交ダンス教室の帰りにパチンコを打ちに来ている、ヒマラヤ登山にお父さん(ご主人)と定期的に通っている、会社の元経営者で性格は男まさり(本人談)、若い頃は徹夜も辞さず会社の若手を引っ張っていた、パソコンが得意でインターネットやエクセル程度は朝飯前…など、わしの理解不足な点もあるやもしれないが、だいたいこんな感じなのだ。

いずれにせよ、短期間でわしは川越さんの情報過多に陥ってしまった。これは意図的に聞いたのではなく、何かの会話の流れですべて川越さんが勝手に言い出したことだ。わしにとっては川越さんはおかんよりやや年上といった感じ、川越さんからは息子より年若。すなわち、お互いの年齢差的にしゃべり易かったのだろう。


ある時、昼過ぎにスカを喰い、帰路に着くとバッタリ川越さんと遭遇した。適当な挨拶を交わし、路上で井戸端会議も何だからと近くの喫茶店に行くことになった。わしは、たまにはこんな早上がりも良いだろう、川越さんはヒマな時間を潰すのにはパチンコよりこの若造との会話の方が良かったのだろう。

通り一遍等な会話の後、やはり話題が「早く結婚しろ」的な話になってきた。川越さんも、わしがマイホールに日参しているのは良く承知しているから、話の内容が次第に説教じみてくる。その説教の中で、自分はかつて離婚&再婚を経験して困難を乗り越えてきたということから、『為せば成る』的な話をしてくれた。恐らく、息子さんにすら語ったことのない深い話だったように思う。逆に、わしもおかんに直接聞けない母親の気持ちの部分を質問し、何気にズケズケ言う川越さんには参ったが、明確な母親の気持ちを代弁してもらった。年長者は自分の辿ってきた人生から、良い悪いは別にして、その人なりの人生観を聞かせてくれる貴重な存在だ。


余談ながら、母親には言いづらいことでも叔母になら話せるということがある。叔母に話すことだから、どうしても家庭的な内容になりがち。最終的には励まされて終わるのだが、結局、叔母は母親の姉であり、話した内容がおかんにダダ漏れになってしまうのが痛い現実だったりする。

それはともかく何気に話込んだ結果、2時間ほどがあっという間に過ぎ去った。その中でも「あなたはまだ30代だから、まともな職に就けば結婚できる可能性はあるわね。別に根暗でもなさそうだし。ただ40になれば、もう無理よ。40男なんて誰も相手にしないわ」との言葉が胸に突き刺さる。わしもいわゆる"不惑"をそろそろ迎える。その前の人生最大の苦悩は、この結婚問題だ。

パチンコを生業としている以上、人並みの幸せが手に入るとは毛頭思っていない。自分のことは自己責任としてこれで良い。ただ両親の遺伝子が後世に残らないのが痛恨の極みなのだ。子としてあまりにも両親に申し訳ない。この意味で、いずれ本気でまともな職に就き、家庭を持つ人生を探求することを真剣に検討せねばなるまい。ハッキリ言えば、ドン引きの選択肢であるが、それもこれも人生とは決して自分だけのものではないと思うからだ。


このところガンダムに没頭していた関係で、最近は川越さんと隣り合うことが少なかった。だが、元気にマイペースで打ちに来ているようだから、いずれまた隣り合って話をする機会にも恵まれるだろう。まぁその時は、まだパチプロを続けているのかと怒られそうだが、まあいいだろう。

住めば都というが、川越さんとの地縁にも恵まれ、ますますマイホールが愛おしくなってくる。様々な人との、人の和なり地縁なりがあってこそ有意義な人生が送れるものだと感慨深い。