まさかピンポイントで…
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※パチンコ必勝本2010年5月号に掲載されたものを加筆・修正しています


この仕事を始めてからあっという間に10年以上経ったが、その間、当初の頃に比べるとパチンコ店の状況はだいぶ変わった。

特にハード面の進化は著しく、普段打ち手側が気がつかない細かな所まで改善されている。

分かりやすい例をあげると、手の汚れと静電気だ。ひと昔前だと、ひどい店では打ち始めて1時間もしない内に手が真っ黒になったり、玉に手を触れると「ビビビッ」と頻繁に静電気が走ったりしたものだが、現在はそのような店はほとんどなくなった。

他にも打ち手側から見て良くなったと思う所は多々あるが、それ以上に店側のメリットの方が大きいのではないだろうか。


例えば、最近ゴトに関する新聞記事やニュースがめっきり少なくなったのは、ひとえに最新のハイテク機器を導入した恩恵だろう。

ちなみに多くの店に設置してある優秀な防犯カメラは、ズームアップすると盤面の釘がどうなっているかなど詳細がわかってしまうのだ。

ほんの一例だが、他にも不正防止機能が随所に施されており、「ゴト師」と呼ばれる輩はやりにくくなり、その数をかなり減らしているのではなかろうか。

それと羨ましいというか、ちょっと寂しく思うこともある。それは駆け出し当時、親しかったり尊敬していた同業の多くが辞めてしまったことだ。

現在はパチンコ店で店員の他にはよほど親しい人以外に話しかけることはなくなったが、10年以上前は今よりかなりピュアな人間だったので、店内においては常に新しい出会いを求め、見知らぬ人になり振り構わず声をかけまくっていた。

その結果、貸した金や玉を返されずに逃げられたり、妬まれたり、いろいろ嫌なことも多かったが、その代わりにたくさんの有意義な出会いがあった。

今のパチンコが縁での友人知人のほとんどは、パチプロ新米の頃に私から声をかけた人たちである。


話は戻るが、当時親しかった連中はほとんどパチプロを辞めてしまったのだ。

彼らは全員私より年下だったが、若いにも関わらずしっかりした考え方を持っており、人間性も良く、年上の私から見ても尊敬できる好青年たちだった。

もちろんパチンコの腕も優れており、収支的には十分にやっていけるはずだと思っていたのだが、次々と辞めていってしまったのだ。

その理由を各々聞いてみると、やはり私も常々言っている共通の問題点があった。それはまず仕事に重要感・価値・生きがいをどうしても見いだせないということ。

そして悪いことに稼げば稼ぐほど周りの人たちや店側から妬み恨みを買い、いくら一生懸命働いても誰も褒めてくれず、おまけに自分の仕事がほとんど世の中の役に立たないとなれば、まともな考えを持っている人なら辞めたくなるのは当たり前だろう。

彼らの何人かとは今でもたまに会って話をするが、幸いなことに全員が異口同音に「もっと早く辞めればよかったと思ってます」と唱えているので私もホッとしている。


ちなみに彼らの中でパチプロ現役時の年収を上回っている人は1人だけであり、それでも全員がパチプロには戻りたくないと言っているのだから、やはり男の仕事の本懐は金ではないということが言えよう。

できることなら私もすぐ今の稼業におさらばしたいのだが、まだ決別の準備ができてない。生活をしていくためにもまだ辞められないのだ。

少なくとも、もう10年若かったらなんとか辞める踏ん切りをつけていたことだろうが、そういう意味では前述の元同業の友人たちを羨ましいと思っている。


2月下旬某日(曇)
今月もあとわずかだが、2ヵ月以上続いた爆裂モードもここにきて終焉を迎えたようで、この1週間ほど収支は下降線を辿っている。

しかし、確率の収束を考えればまだまだ数字は落ち込むはずなので、それに備えて稼働時間をしっかり確保している。

今日も打てれば6日連続の稼働となるが、6月に予定しているイラン行きの資金のこともあり、最近には珍しくハードワークをこなしているのだ。

自慢するわけではないが、今日もし終日打つことができれば久し振りに月200時間オーバーの打ち込みとなる。

といってもやはりそろそろ体がキツいので本当は休みたいのだが、前述の理由でアテがある以上は朝イチから行ってみなければいけないのだ。


8時20分、今日の目的地であるD店到着。実はこの店、昨日1軒目がダメで2軒目に訪れたのだが、予想に反して牙狼のシマの釘が開いていて、以前から何度か打っていたデキの良い1台を打ち切り、残念ながら1万3000円負けてしまったが、仕事量3万円以上を確保することができたのだ。

そして今日は牙狼のイベントの日でもあり、釘が据え置きの可能性が大いにあるのでやって来た次第である。


8時半に入場抽選が始まったが、予想より人は少なく30数人。しかも今日のイベントコーナーは他の機種やパチスロにもあるので、牙狼の台取りは入場が後ろの方でも容易に思えた。

ちなみにこの店の常連は、人が少ない時は前日長く打っていた人が朝イチから来ていた場合、先に店へ入ってもほとんどその台を押さえるようなことはしない。

もちろん今日も常連たちは来ていたが、この時点では楽に昨日の台が取れると目論んでいた。


ところがここで予期せぬ人物が目に止まった。それは、未だにひと言も言葉を交わしたことはないが、5年以上前から私が一流と認識している若い同業の男性だった。

彼が朝イチからいる以上は狙い台があるはずだが、まさか30台以上もある牙狼の私が狙っている台なんてことは? などと勘繰ってしまった。

何故かというと、これまで他の店で私が目をつけている台を何回か先に取られたことがあったからだ。

たぶん彼は一流のプロだから、カマを掘るとは考えられず、たまたま違う日に同じ台を打っていたのだろうとは思うが…。

抽選で彼より前の番号を引き当てれば問題ないが、こんな時に限って私は後ろの方だった。


抽選後すぐに入場となったが、案の定彼は私の前だ。あとは彼がピンポイントで例の台を狙っていないことを祈るのみである。

彼が入場してから30秒も経たない内に私も店へ入り、一目散に牙狼へと向かった。


シマへ着いてみると彼の姿はなく、おまけに昨日よりも閑散としており、私の狙いの台付近には人がいない。ホッとしてその台を取るべく急いでシマへ入った。

次の瞬間、青天の霹靂ともいうべき事態に気が付く。なんと彼の番号の台取り札がドル箱に置いてあったのだ。しかも釘は状態が良かった昨日よりも更にヘソが開いている。

だからこそ一流の同業の彼は押さえたのだろうが、シマに彼がいないところを見ると、明らかにピンポイントで狙っていたとしか考えられない。

でなければ他の牙狼の釘もじっくり見ているはずである。おそらく以前D店へ来てめざとくこの台を探しあてたのだろう。

このような場合、昔だと「俺の台だ」というとんでもないことを言う輩がおり、しかもそれを容認している店が少なからずあったものだが、現在の私のテリトリーにはそのような店はなくなり、だいぶパチンコ店の環境は良くなった。


多分この稼業をやり始めた当時なら、彼に間違いなく「この台昨日打ってたんだけど、君も前にこの台打ったことあるのか」というようなことを聞いていたに違いない。

当時とだいぶ状況が変わり、少なくとも私が通っている店のほとんどは平等な入場抽選を行なっているので、昔のように権利付けなどで悩むことはなくなった。

というか、朝早くから客を平気で並ばせるような店は気分が悪いし、私の危ない性格からして割り込みなどを見つけた際、注意してトラブルを起こすのが目に見えているので、できるだけ避けるようにしている。

実際5年目くらいまでは、その手の店で度々トラブルを起こしていた(ちなみに私が騒いだせいで入場抽選を始めた店が少なくとも3軒はあると思う)。

という理由で今日のような店によく来るわけなのだが、私より早い番号で入った人が私が打ちたい台を取ったからといって、ルール違反ではない限り文句を言ったことは一度もないし、逆に好きな台を取って他人にとやかく言われる筋合はないと思っている。

まあ私の立場からすると不利な面も多いが、なるべく環境の良いところで気分良く打ちたいので、前述のようなことは割り切らねばと考えているのだ。


9時ちょうど、それでもいつものイベントよりもへソが広いので、私もなんとか3番目の候補の台を選んで打ち始めた。

1番の狙い台より1000円あたり1~2回転前後落ちると認識していたが、昼前には良調整のおかげでなんとか打ち切れる台だと確信し、今日も終日勝負になることを覚悟した。

ただ今後私がA君が打っている台のカマを掘ったと思われるのもシャクだったので、私のことを意識させる意味で時々彼の方を見たり、近くを通ったりした。

しかしこれが後に、一見おとなしそうな彼の逆鱗に触れようとは、この時は夢にも思わなかった。


以下次週に続く



やはり昨年、ピンで8桁の同業は存在した

この仕事をやっていると年に1回くらいはメーカー側や店側の意図に反した「キズ台」まがいのちょっとした攻略法で稼げる台に遭遇する。昨年はこの手の台で「蒼穹のファフナー」という機種があったが、その旬の真っ最中に西日本で昆虫採集に没頭してしまい、かなりの大魚を逃がしたことは、ここ数年来最大の不覚だった。

その時、虫友達でもある同業のT君は稼ぎまくり、ひと月で400万円も利益を上げていた。高度な技があったからこそそれだけ稼げたのだが、もっと驚いたのはやはりファフナーを追いかけて8桁の大台に乗せた人が何人かいたことだった。

なんでもこの機種を追いかけて西日本から北海道まで行ったそうである。ただこの話にはオチがあって、たくさん稼いだ若いお兄ちゃんたちは、札幌のキャバクラなどでなんと一晩100万円もの豪遊をしたらしい(笑)。私も一晩100万円とは言わないが、せめて50万くらい使ってみたいものだ。今後もこのようなチャンスが巡ってきたら、二度と乗り遅れないようにと反省している次第である。