1年半振りの旧基準フルスペック
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1年半振りの旧基準フルスペック
※パチプロ必勝本2000年11月号に掲載されたものを加筆・修正しています
『人間は個人では生きられない。集団の中だけでしか生きられない動物だ』(小野田寛郎氏談※)。
私も基本的にそう思う。パチプロの場合、自分も含め、その多くは集団生活(会社等)を放棄したか、ついていけなくなった「個人」、いわゆるアウトサイダーなのである。
不況の昨今、集団という要塞の中にいても安全とは言い難いのに、まして個人で生きていこうとなったら、かなりのリスクを背負わなければいけない。だから相当の苦痛に堪える精神力は絶対不可欠なのだ。
最近憂えることがある。学校を出て間もない20歳前後の若い子達がこの世界に飛び込み、壁にぶち当たった際に、精神的経済的に追いつめられ廃業するというパターンに度々遭遇するのだ。前述の小野田さんの言葉をまた引用させてもらおう。
『いかなる状況になっても生きる道を切り開いていく。状況が変わったからお手上げじゃいけない。死ぬ覚悟でやってみる。腹を括った時に潜在能力が発揮される』
私が知る一流プロの多くは、この仕事を始める前に崖っぷちまで追いつめられ、あるいは谷底に突き落とされるような経験をし、それを克服してきた猛者達なのだ。だから壁にぶち当たっても簡単に音を上げることはないと思っている。
もしこの世界に飛び込もうと考えている人がいるのであれば、本気で稼いでやろうという気構えだけは持っていてほしい(※あくまでも状況が良かった2000年当時のこととして捉えてもらいたい)。中途半端な気持ちで向き合ってどうにかなる状況ではないし、失敗した場合には、廃業即借金苦などという最悪の事態に直面する可能性も高いのだから。それから、どんなにパチンコが好きであっても、プロとしてやっていくと娯楽の範疇でなくなることも言っておきたい。
幻滅するようなことを書いて申し訳ないが、やはりパチンコを娯楽という観点から考えるのであれば、毎日会いたくても会えない恋人のような関係がベストなのではないだろうか。
ちなみに、腕のいいアマチュアの友人達は、パチンコ収入こそ年間百万くらいだが、会社員としての生活の基盤もあるし、何とか楽しくやっていることだけは確かである。
8月は長期休暇を取ったため、仕事上取り立てて書くべきことが見当たらない。よって、前回の続きの「ハプニング」について書くことにする。
7月25日(火)晴れ
22日は急用で仙台に帰り、一昨日また朝イチで岩手へ戻ってきた。そのまま店探しに出て、4軒目の店(換金率約2.63円・無制限)で千円ベース21回転弱、出玉約2200発のCRメルヘン2を見つけ、何とか1500円のプラスにて終了。
悔しかったのはB店のパープルアイスの釘が据え置きだったこと。前回止め打ちがバレて打てなくなった台だ。恐らく今回の遠征では期待値トップの台だっただろう。しかしそのおかげ? で後述のような大間違いが起こったのかも…。
次の日は、同じ店のCR竜王伝説Zで生涯初の旧フルスペックでのホームランを達成、プラス16万500円のプラス。
当然の如く今日も同じ店に向かう。あわよくば昨日打った竜王伝説の釘がそのまま残っていますようにと願いながら…。しかし、そうは問屋が卸さない。ヘソがものの見事に締まっている。
だが、同じシマを見てみると、昨日確実に千円で30回転以上あると思われた台の釘が据え置きで、しかも他のシマにも期待値3万を超えそうな台がたくさんある。地元の友人J君も、これは予想外のことだと言っていた。欲を言えば、大当たり確率が高い機種の釘をもっと開けて欲しかったが。
しかし贅沢は言っていられない。最近の私は、1日の期待値が3万5千円以上あれば波の荒い機種でも気にしないで打つことにしている。だから旧基準フルスペックだろうが、変則権利物だろうが、とにかく少しでも期待値の高い台をと隈なく探し回った。その結果、CR大工の源さんのシマにとんでもない釘調整の一台を見つけた。
その台はヘソ幅が約14ミリで上げ角度がほぼ0に近いプラス調整。ジャンプ、道、風車、スルーはノーマルだが、寄りもプラスで、アタッカー周辺は出玉2400発を切らない調整と思われた。ここまでなら大騒ぎするほどのものでもないのだが、ワープ入口3ケ所の釘を見て驚いてしまった。今までに見たことがないほどガバ開きになっているのだ。
ん、待てよ、そういえばパチンコ店幹部の友人Hがこんな話をしていたっけ。
『この前、大工の源さんのヘソを開けて、ネカセを変えたんですよ』
だがこの台はどう見たってベース40は切りそうにない。9時5分、このワープがガバ開きの源さんを打ち始めた。
しかし危惧していた通り、ワープからたくさん入る割にデジタルが思ったほど回らない。もしかしたら、ベース40どころか、35も回らないのじゃなかろうか、と不安を感じ始めた投資2千円47回転目で、炎からコンベアリーチが発生した。
図柄はカンナ。もし当たっても確変ではないけれど、アマチュア時代、このリーチが高速になるかならないかの瀬戸際の瞬間は実にドキドキさせられたものだ。もし確変図柄が走ろうものなら、心臓が胸から飛び出るのではないかというほど興奮したのを憶えている…。
パチンコ無知のボロ負け時代、頻繁に打ったこの機種の感傷に浸りながら見守っていたら、これがあっけなく高速になって当たってしまった。
ここで我に返る。昨日も他のシマだがお座り一発でプラス16万オーバー。そして源さんのシマには私を含めて2人しか客がいない。さらに昨日遅番だった店員さんのほとんどが顔を揃えている。ちなみに、この店の店員さんは今時珍しいハードな通し勤務。25年ほど前、パチンコ店のアルバイトをしたことがあるが、当時は通し勤務が当たり前で、金を使う暇もないほどくたくたに疲れたものだった。
案の定、昨日玉を流してくれた店員さんが私をじっと見ていた。この男、やけに当たりまくるな、一体何者なんだろう? とその目が言っているかのようだ。
7月半ばまではなかなか大当たりが引けず苦労の連続だったのに、調子が良い時は得てしてこんなものなのだ。この台に自分の意志など通じる訳もないが、理想としては現在の持ち玉を全部使い切り、追い金を1万ほど使って22時頃にプラス3万ちょいくらいで終わりたい。昨日みたいな大勝ちは要らない。そうなれば、店員や常連の、よそ者に対する鋭い視線が少しは緩和されるだろう。
しかし、二度あることは三度ある。155回転目に5のお願いリーチがピタッと当たった。この時点にしても、源さんのシマはガラガラなので注目度はすごい。常連と思われるおじさんおばさんがすぐに図柄を確認にきた。ここに至っては、頼む、爆発するなよ! と本気で思ってしまった。
今回の遠征初日、この店の姉妹店であんなこと(パープルアイスの止め打ちを注意される)がなかったらここまでナーバスにならなかったはずだが、知らないところで連日大勝ちした場合、細心の気配りをしても損はない。
この連チャンは何とか4回で終了したが、まだ10時40分なのに持ち玉は1万発を超えている。この時間にしてはこれで十分。ストレートで持ち玉を飲まれても良いくらいだ。今度はハマってくれという願いが通じたのか、あっさり確率オーバー、1106回転目で単発を引いた。
以降20時過ぎまで、662回転単発、115回転単発、291回転単発、と1~4箱の間を行ったりきたりの膠着状態が続いた。仮にこれから大当たりを一度も引けなくても閉店近くまで玉は持ちそうだし、たとえ負けてもマイナス2千円で済む。今時、旧基準フルスペックを終日打てるだけでも幸せなのだ。
20時20分過ぎ、トイレに行こうと思ったら、最後の保留玉で炎が発生し、図柄が持ち上がって久々にコンベアリーチになった。図柄は源、回転数は313回転。実は1時間ほど前、同じ図柄のコンベア高速リーチがハズれている。まあ、今度は走らないだろうと思っていたら、なんとまたもや高速になったではないか。当たる確率は約67%! これはアツい。周りの人達が一斉に注目している。ここは恥ずかしいけれど、手を合わせてお祈りするしかない。果たして…今度はバッチリ大当たり。直後、「ヨシッ!」と大きめの声を出し、ほとんど年配のギャラリーの人達と笑顔で挨拶を交わした。
少し大袈裟に思われるかもしれないが、これらの一連のアクションは時として、プロにとっては重要な演技だと認識しているので、度々やっている。
そしてここからが凄まじかった。22時30分の閉店までに16連チャンし、確変が終わらなかったのだ。
結果は2400発のドル箱が20箱(最後の1回分の保証を含む)。プラス12万7500円。千円ベース約36回、2日連続で旧基準フルスペックでのホームランだ。非常に嬉しかったけれど、かなりの有名人になってしまったらしく、明日以降のことを考えると少々気が重かった。
この店は翌日以降も、主に旧基準のシマに甘い台が何台かあり、もちろん打ったのだが、相変わらずお座り一発状態が続いた。ヤジキタが2日間でプラス17万5千円、最終日はメルヘンを打ってプラス4万5千円で終了した。初日、パープルアイスで立ち回りの失敗があったものの、見事に1月の岩手遠征のリベンジを果たすことができ、大満足であった。
今回の遠征の成績は7戦全勝。プラス57万7千円、稼働80.8時間。年に数回の爆裂期間となった。これで心置きなく長旅に出かけられる。しかしそれにしても周囲の眼差しが厳しい1週間だった。
追記――8月は既に述べた通り、稼働が少なく9日しか打てなかった。その上、前述の反動? のせいか期待値を大幅に下回り、収入は10万にも満たず。自分の年間目標の数字にはまだまだ遠いので、9月からはいっそう気を引き締めて、今まで通り長時間稼働するつもりである。
※小野田寛郎…大日本帝国陸軍少尉。太平洋戦争終結から29年目にしてフィリピンルバング島から帰還を果たす。
※CRメルヘン2[三洋]…大当たり確率 設定1:1/233、設定2:1/241、設定3:1/257、確変突入率1/2、1回ループの権利物。
※CR竜王伝説Z[豊丸]…大当たり確率1/389、確変突入率7/22、2回ループのデジパチ。
※CR大工の源さん[三洋]…大当たり確率 設定1:1/369.5、設定2:1/405.5、設定3:1/438.5、確変突入率1/3、2回ループのデジパチ。
【初出:パチプロ必勝本2000年11月号】
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