冬より寒い夏
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- 打チ人知ラズ。(わし)
冬より寒い夏
わしは下っ腹がぽっこり突き出たデブで、髪の毛も薄いクセに長髪を自慢としている。オマケに首周りがヨレヨレになるまで着古したTシャツと滅多に洗わないGパンが夏の定番ファッションだ。これだけでもすでに大分アレな感じではあるが、さらに伸び放題の無精髭を引き連れ、皮脂汚れでテカテカに輝いたメガネまで装着しての出勤だ。
こんなわしを見た他人の印象を推測し一言に集約すれば、これはもう間違いなく、「暑苦しいヤツ」というものだろう。また余計な一言を付け加えるなら「暑苦しくて臭そうなヤツ」で鉄板。まあ、これは他人にどう思われてもいいパチンコ屋での話だから、本当にどうでもいいことなのだ。
しかし仕事(バイト)やデートなどのパチンコ屋以外の外出時は、キチンと糊の利いたポロシャツと外出用のズボンを着用していることだけは付け加えておきたい。社会から多少はみ出した場所に身を置いてはいるが、わしは案外まともな人間だし、社会人としてのマナーだってしっかと身に付けているのだ。しかし長髪であるが故、他人から暑苦しそうに見られてしまうのは仕方ないと諦めている…。
9月に入り暑さや日差しの厳しさはかなり和らいできたが、まだまだ残暑が厳しくなる局面もあるだろう。ゆえにホールは言うに及ばずだが、施設内はまだまだクーラーが大活躍中である。
さて、先に述べた通り暑苦しさ全開の容姿なわしではあるが、実は"冷房"が大の苦手だったりする。
数年前の夏の盛りのこと、わしはある片田舎のホールでスーパー海物語(スー海)を追っていた。なぜか右側の釘調整が甘い台があり、ライバルが極端に少ないこともあって高い電車賃を払いながら一定期間通い続けたのだ。
この時にわしが追っていた台はカド台だったのだが、右側が通路なので、デブのわしにも充分なスペースが確保できて非常に快適。しかも片田舎なので、各台が都会に比べて左右の幅がゆったり設置されているのも良かった。
と、スペースに関してはこの上なかったのだが、頭上にクーラーが設置されている点が大問題だった。わしが見つけた優秀台に座っていると、クーラーの強風が延々と座席を直撃し続けるのだ。
その強風の直撃により、薄すぎる頭部があだとなったのかもしれないが、まずは寒さによる頭痛などを引き起こす。そして稼働時間が伸びるにつれ身体全体を冷やし切り、ついには足の指先まで震え出す始末。
オマケにヒドい悪寒から無意識のうちに奥歯を強く噛みしめ続けて顎が痛くなった。寒さに耐え切れず、ホールに常設されているひざ掛けを借りて羽織ってみたが、冷え切ったわしの身体を暖めるにはあまりに役不足の代物であった。
このホールはクーラーをガンガンにしてキンキンに冷やしまくった空間を提供することが最大のサービスだとでも思っているのだろうか? 都心の客の出入りが激しいホールに比べ、片田舎で客も少ないから外の空気が入ってくる頻度が少ないという事情もあろうが、それにしても…である。
余談ながら、知り合いの元店員の話では、ホール内の室温は重い玉運びなどの仕事をしている人間が涼しいと感じる程度の設定温度にしているらしい。「俺は一番低い16度にしてたよ。だって暑いじゃん」と、自分のことしか考えていないようだった。
とにかくこの寒さをどうにかしなければなならない。なぜなら、台のレベルを考慮すれば、寒いことを理由に追っていた台を放棄する選択肢はなかったからだ。
寒さが緩和される場所での優秀台探しも考えたが、「そもそも他に優秀台が存在するのか?」という当たり前の疑問が生まれるし、しかも台探しに使うカネと時間の無駄を考慮すればリスクもある。結局は寒さに耐えて打つしかない、という結論に辿り着いてしまうわけだ。
この経験以来、薄い頭部を守る厚手の帽子と長袖のジャンパー、これが夏場の稼働時の必須アイテムとなった。
それから月日は流れた。東日本大震災以降のパチンコ業界では、夏場の電力抑制するために、室温を28度以上にする申し合わせがあるそうだが、この指導をマイホールも忠実に守り、もはや真夏の盛りでもジャンパーを羽織って寒さに耐えることはほぼなくなった。しかし夏場の集客という観点からすれば、ホールとしては他の施設以上にキンキンに冷やした空間を作り、客を自店に引き留めておきたいというのが本音なのかもしれない。
ただわしのように1日中ホールで稼働する人間からすれば、キンキンに冷やした環境下では寒さに凍えるハメになり稼働もままならない。また週末などであればホールに長時間滞在する可能性の高い人も多いだろうから、"冷やし過ぎ"というのは長時間の稼働を促すには不向きだと思うのだが…。
そういった意味では最近のホールは、わしの体感温度的に過ごしやすい空間を提供してくれているため、今では帽子の効用は薄毛隠しのみとなっている。しかしかつての体験から、夏場の台選びでは、まず冷房の位置を確認することから始めるようになった。これは職業病なのだろうか…!?
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