増収のための新たな試み
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※パチプロ必勝本2002年6月号に掲載されたものを加筆・修正しています


最近、断腸の思いである事に終止符を打った。実は訳あって年頭から人を使って仕事をしていたのだが、3月下旬、その人に引導を渡してしまったのである。

私は本来、変わり者で欠点だらけの性格なので、気心の知れた親友ならともかく、他人と組んで仕事をしたって絶対上手くいくわけがないと思っていた。実際、それ以前にも何回か単発で人を使ったことはあったが、1日13時間の稼働を2日も続けさせようものなら、3日目には決まって「休ませてほしい」と言われるのが常だった。

しかし、今回のT君は彼らとは明らかに違っていた。例えば「この台を閉店まで打ってくれ」と頼んだら、特に用事がない限り、トイレに立つ以外は13時間ひたすらデジタルを回してくれるのだった。当初、私に使ってもらっているという負い目からかなり我慢をしていると思っていたのだが、大した苦痛とは感じていなかったようなのである。これにはちょっと驚いてしまった。

しかし、それをいい事に、私はT君の限界を知りたくなり、彼が自分から休みを申し出るまで1週間連続で打たせてしまった。結局8日目に休ませたのだが、彼はそれまで決して音を上げる事はなかった。


ところで、1人で仕事をする事が好きな自分がなぜ彼を使ったのかという理由をここで述べておく。

以前何度か書いたが、将来(本当はすぐにでも)、私は山奥に引っ込み、自然観察の日々を送りたい。ただ、生活に必要な収入はある程度確保しなければいけないので、そのために民宿かペンション等の宿泊施設を建て、生計を得ようと考えている。そして、そこを訪れた人達に自然観察指導員のようなお手伝いができたらいいな、というのが夢であり目標なのだ。

しかし光陰矢の如し。容赦なく時は進むものの資金は一向に貯まらない。このままではXデーにパチプロを辞めることができなくなってしまう、という思いが年を追う毎に強くなってきた。私はこの仕事に慣れて2年前からパチンコ以外での増収を常に考えてきたが、今のところまだ上手くいっていない。


そこで去年、優秀な同業である2人の友人からのアドバイスに耳を傾け、人と組んで打つ事を決意したのである(実際に彼らは人を使い、私より2割ほど収入が多い)。そのうちの1人A君から紹介されたのが冒頭のT君だったのだ。彼はA君のお墨付き通り、真面目、素直、ハングリーと三拍子揃った、一緒に仕事をするにはうってつけの人物だった。

ただコンビを組むにあたり、会社員時代のように嫌いな人と我慢してまでやるつもりはないので、とりあえず彼の人間性を理解するよう努力した。そして、多少考え方に違いはあったものの、ようやく彼を信頼する事ができ、この1月から一緒に仕事を始めたのだ。

彼の家は経済的にかなり困窮しており、年老いた両親の多額の借金返済を助けるため、彼は毎日必死で働いていた。ちなみに私と知り合った時、彼は昼に勤めている会社には内緒で夜の10時から朝の4時までアルバイトをしており、月々25万の収入を必死になって確保していた。それに比べれば、私の仕事はいくら13時間稼働とはいってもT君よりはずっと楽である。


前々回でも触れたが、1月は例年通り長期休暇を取り、彼の方もまた仕事始めは前職の都合により9日からとなったため、2人合計の稼働時間は目標より80時間も少なかった。しかし収入の方は期待値を大幅に上回り、320時間の稼働でなんと時給3600円を超えたのだ。

しかし私は、ここで大いに危機感を持った。それは2月に訪れるかもしれない確率の収束についての懸念だ(今考えてみるとこれがT君のパチプロとしての寿命を縮める伏線となったようだ)。しかも都合の悪い事に、2月はのっぴきならない事情で私が打てない日が多く、彼にかかる負担が心配となり焦りに余計に車がかかっていた。

当時一番念頭に置いていたのは、1月の埋め合わせ=2人合計で最低500時間以上の稼働という事だった。しかし予想通り、1月の収支に帳尻を合わせるように期待値はなかなか出なくなり、おまけに打つ台のクオリティーも下がっていった。そんな中で私は、彼に日当2万そこそこの台でも持ち玉になったら終日タコ粘りさせて酷使してしまったのだ。また、なかなか良い台を探せない苛立ちと確率負けの多さ、それと精神的な疲れで、理不尽な事で度々彼に辛く当たってしまった…。


今思うとこの時点でもっと冷静になっていれば、時給はだいぶ落としたものの、稼働時間の多さでなんとか収支をカバーできていたので、別に焦る必要などなかったのだ。しかし、お互い連日の疲れからか精神的にゆとりがなくなり、ギスギスした関係がしばらく続いてしまった。

そして辛抱強い彼もさすがに業を煮やし、2月下旬、遂に仕事を辞めると言ってきた。この時、私はやっと我に返り、自分の非を彼に素直に詫びたのでなんとか収まったのだが…。


3月に入り、2月の出来事があったせいかお互いの信頼関係も深まり、徐々にではあるが収支の方も好転してきた。そして彼のレベルも目に見えて向上し、順風満帆かと思われた矢先、頑健に思えた彼が体の不調を訴えだしたのである。



3月21日(木)晴れのち雨
今日は4日ぶりにT君と同じ店で打つ事になった。彼と一緒に仕事をやり始めて2ケ月半近くになるが、大概は勝負ラインをクリアーする台を1つの店で2台見つける事は難しく、月の内半分はお互い別々の店で打っていたのだ。それが今日、初めて同じ店(換金率約3.3円)で2人とも千円あたり35回を超えそうな釘調整の海3R(何故そのような台があったのかはシークレット)をゲットしたのである。

3月は、昨日まで2人合計で326.4時間の稼働で時給2千円ちょい。2月の猛烈な稼働が報われたのか、成績の方はだいぶ良くなってきた。ただ、T君は先月中旬頃から肩の苦しさを度々訴えてきたので、今月は打つ台が1台しかない場合は、できるだけ私が稼働するように配慮してきた。極端に言うと、最近の彼はは3勤1休のような感じで、連続3日を絶対に超えないようにしていた。

当初、これ以上パチプロに適した資質を持ち合わせた人はいないのではないかと思い、まるでダイヤの原石を見つけたように嬉しかったのだが、やはり「天は二物を与えず」という事だったのか。ただ、慣れてくるまである程度稼働を落としてやれば、きっと体調もよくなるだろうと楽観していた。しかし、最近、大幅に稼働を減らしたにもかかわらず、肩の不調は良くなるどころか、以前にも増して酷くなってきているようなのだ。

断っておくが、彼はこの仕事をする前は、5年ほど昼夜馬車馬のように働いていた時でも一度たりとも体を壊した事はなく、頑丈そのものだった。以前に比べれば明らかに仕事は楽なはずなのになぜこんな事になったのか。

色々考えた結果、ひとつの不安に思い当たった。「もしかしたら血行障害かも?」。彼はこれまで仕事で常に体を動かし、じっといている事はほとんどなかったはずだ。


ここで20年以上パチプロをやっている友人のA君の悩み「エコノミークラス症候群」の恐怖の話を思い出した。彼は3年前から仕事中に太腿のしびれが酷くなり、3時間くらい椅子に座っていると、しびれを通り越して耐えられないほどの苦痛に変わったことがあった。だから現在は、どんなに時給の高い台を打っていても、最低でも1時間半に1回は10分くらいの休みを取り、かならず散歩したり走ったりして足を動かしている。その甲斐あってか今のところなんとか悪化を防いではいるが、最近は首の状態も悪いのだと言う。

本来人間は、ある程度体を動かさないと不都合が生じるようになっているのだ。そしてパチプロである限り、不健康な生活に起因する体の変調(私の場合は極端な視力の低下)の恐怖は避けて通れないのである。


話を戻そう。9時ちょうど打ち出し開始。T君も少し離れているが、同じ機種を打っている。実は今日、もしもT君に体の変調が見て取れたら、ある決断を下そうと考えていた。

と、大当たりのランプ連動が頭上を走った。どの台が当たったのか見回してみると、珍しい事に最近はハマリの帝王だったT君がお座り一発で、シマのトップを切って当たっているではないか。彼には失礼だが「単発だろう」と思いきや、その後1時間以上もランプは光りっ放し。投資たったの500円で8連チャンもしてしまった。

この時点で、彼の正確な回転率を把握する事は不可能だが、釘を見た限りでは間違いなく千円あたり30回を大幅に超えている。もうこうなれば変な台(?)でない限り、ほとんど勝ったも同然だ。私の方も彼の確変が始まって間もなく、投資11000円、338回転で確変をゲットした。

以降、持ち玉を切らす事は一度もなく、徐々にではあるが確実にドル箱を増やしていった。彼の方も確変図柄の出現が少なくなったが、私以上の当たりを引いていた。そして23時10分前、示し合わせたわけではないが、ほぼ同時に仕事を終えた。だが、ジェットカウンターに2人並んだ時、私の中の勝利の余韻は吹き飛んでしまった。彼の顔を見て愕然としたのだ。

なぜなら、彼の表情には勝利の喜びではなく、明らかに苦痛の表情が浮かんでいたからだ。半分死人のような顔だった。そして彼は私に

「すみません、換金を頼んですぐ帰っていいですか?」

と言ってきた。いつもであれば、2人同時に終わった後は必ずその日の内容について一緒に計算し、後日の予定を確認してから帰る事にしているのだが…。我慢強い彼にしては相当な苦痛であったに違いない。私は「ああ、いいよ。お疲れ様」と言うのが精一杯だった。

「これで終わりだな」という気持ちが私の中に広がっていった。もうこれ以上彼の体を痛めつけるわけにはいかない。今まで一生懸命頑張ってきただけに非常に残念ではあるが、明日は彼に引導を渡そうと決意した。


本日の成績(2人分)。初当たり7670分の30(255.666分の1)、確変図柄23回、通常図柄30回。投資4500円、回収15万2250円。回転率は両方とも千円あたり35回を超えていた。

後で気付いたのだが、午後になってからT君は苦しさのあまり何度も席を立っていたらしい。確認のため彼の台をチェックすると、総回転数は4479回で、私と比べ当たりは1回多かったものの、346回も回転数が少なかったのだ。普通なら私と100回転も差がついてないはずなのに…。優秀台を打つときはできるだけ席を離れるな、と彼に言ってあったので、真面目な彼にしては珍しい事なのである。


翌日、T君に仕事としてのパチンコを辞めてもらうように伝えたのだが、やはり彼も覚悟をしていたらしく、私が言わなくても自分からドロップアウトを切り出すつもりだったようだ。

その後、T君は前の仕事に戻り、すぐに体調も良くなった。今でも状況が良い時だけ彼に声を掛けるようにしているが、たまに打つ分にはいい気分転換になり、体に影響もないので、T君にとってはこれがパチンコとのベストな付き合い方なのだなと思っている。