【第3部】第17話
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俺は坂井と待ち合わせをしていたホールへ向かった。

前回の新装の時にも来ているので、並ぶ場所は把握している。ホールの裏手がパチスロ、正面がパチンコの並びだ。

昔は初見のホールだとパチスロかパチンコか、どっちの並びか分からず、並んでいる人によく聞いていたのも今となっては懐かしい思い出だ。

正面側へぐるっと回ると、すでに坂井は並んでいる。地元のツレと偶然に会ったらしく、楽しげに話をしていた。

「おう、坂井。早いな」

「聞いてくれや、タケシ。なんか今日は液晶のパチンコが新台で入るみたいやで」

「液晶? なに? テレビみたいなのが付いてるんか?」

「そうやろ、知らんけど。なんかめっちゃ興奮するわ。あっ、コイツ地元のツレの石井」

「どうも」

「あっ、どうも」

「なんやねん、お前ら素っ気ないなー。石井もめっちゃパチンコ好きなんやで」

「へー、パチスロは?」

「パチスロは金にならんから打たんねん」

「まぁ、パチンコの方が勝てるもんな」

「石井、タケシはめっちゃパチスロ好きなんやけどな、最近はお前と一緒でパチンコばっかり打ってるわ」

「自分、あー、えーと石井やっけ? 液晶のパチンコ打ったことあるん?」

「隣町に先週入ったから俺は何回か打ってるで。アレやわ、レクサスみたいな感じちゃうかな」

「単発打ち、効くん?」

「ちゃうちゃう、保留で連チャンすることが結構あるねん、オモロいで」

「なにそれ!! めっちゃオモロそうやん。でも、液晶ってどんなんやろ」

「見たらビックリするで。今も坂井に液晶スゴいぞって話しててん」

「でもアレやな、なんか液晶ってよう分からんけど、誤魔化されてる感じするわー」

「それ、隣で打ってたオッさんも同じこと言うてたわ」

「誰がオッさんやねーん!!」

俺は初めて会った坂井のツレとパチンコを通じ、一瞬で打ち解けた。

この時、俺の頭のなかは液晶機のことばかりで、カオリちゃんからベル(ポケベル)で電話ちょうだい、と通知が来ていたことをすっかり忘れていた。


3時間ほど並び、時間は18:00。ようやく開店だ。

俺ら3人はダッシュで新台のシマヘ飛び込み、なんとか台を確保することに成功した。

「うわー、ホンマにテレビみたいなん付いてるやん!! なにこれ、スゴいなー!!」

「タケシ!! めっちゃ綺麗ない? この画面、ヤバいって!!」

「なっ、スゴいやろ? パチンコも遂にここまできたって感じやな」

「おー、ホンマにスゴいわ!!」

これが今となっては当たり前になっている液晶機の元祖「麻雀物語」である。

(C)HEIWA

新装初日とあって、当たり前のようにグルングルン回る。当時は換金率も低かったうえに、新装初日は5時間営業なのでどこも激甘仕様となっていた。

それを考えると、あの当時の3時間並びなんて少しも苦ではなかった。

そして開店から小1時間ほど経過した頃、初めて見る液晶機を存分に味わっていたのだが、どこか引っ掛かることがあり、ソワソワしていると…

「タケシどうしたん? この台、めっちゃオモロいやん。適度に保留連もするし」

「いや、確かにオモロいし、液晶ってただただスゴいなって感動すら覚えるよ。でもな、なんか忘れてるねんな…」

「なんやねんなー」

「んー、あっ!! ベル!! カオリちゃんから電話くれって連絡あったんやった。どうしよ、閉店まで打ってからでイイか」

「お前、そんなんばっかりしてるから彼女おらんねん」

「やかましいわ」


22:00。店内アナウンスが入る。

「えー、少し早いですが、本日は閉店とさせていただきます。皆様、ご来店いただき誠にありがとうございました」

「まぁ、パチスロ含め、えらい今日は出てるからな。なんとなくそんな予感はしてたわ」

「十分やろ、こんだけ出れば」

「そやな、俺もなんやかんなで3万近く勝ったわ」

「タケシが勝ち頭やな。飯奢ってもらおうかなー」

昔は予想外に出た場合など、ホールの都合で閉店が早まることはしばしばあった。


閉店。

「いやー、マジで楽しかったなー。飯でも行く? 近くに王将あったやろ?」

「お前、王将ばっかりやん!! タケシ、もう閉まってるし、俺はもっと美味しい中華知ってるぞ」

「王将より旨いとこなんかないやろ〜」

「あるねんな、それが。なっ、石井。あそこ」

「あぁ、陳珍か? 確かに旨いな、あの店。この時間やってたかな」

「やってる、やってる。23時までや」

「おいおい、ちんちん? って名前なん?」

「そやで」

「そうか。あんまりそそられへんけど行こか…。あっ、ちょっと俺、そこの公衆電話寄って行くから先行っといてや」

「この道、まっすぐ行って1つ目の信号を左に曲がったところや。ほな、先行っとくわ」

「はいよー」


俺は少し面倒くさいな、と思いながらも、連絡がだいぶ遅れてしまった言い訳を考えていた。バイクで事故った、ツレが捕まった、ポケベルを家に忘れてた…

「あー、もうエエわ。あの子やったら素直に打ってた言うても怒らへんやろ」

電話BOXへ入って10円玉を適当に放り込み、カオリちゃんの家に電話をする。

プルルル、プルルル、プルルル…ガチャ。

「もしもし、あっ、カオリちゃん?」

「そうやけど、誰?」

「あっ、タケシやけど、ごめん、電話遅なってもうて。いや、なんか新装で席離れづらくて、ごめんごめん」

「えっ、パチスロ打ってたん?」

「いや、えーと、パチンコ」

「どっちでもエエけど…電話ぐらいできるやろ?」

「まぁ、そうやな。ごめんって言うたやんか」

「もうエエわ。今日、めっちゃ楽しみにしてたのに」

「えっ?」

「もしかして忘れてたん?」

「…」

「さよなら」

ガチャ。ツー、ツー、ツー…。

「えっ、約束なんかしてないよな…は?」

俺は一生懸命思い出しながら、坂井と石井の待つ陳珍へと向かった。

ガラガラ。

「おうタケシ、こっちこっち」

「とりあえず、天津飯と餃子」

「どないしたん? 電話なんやったん?」

「なんか今日、約束してたみたいなんやけど、全く思い出されへんくてな。めちゃくちゃキレてたわ」

「またかいな。何回フラれるねん、ホンマに」

「いやー、パチスロとパチンコのことで頭いっぱいやから、毎度コレやわ…。あの子やったらワンチャン理解してくれるかな、と思ったんやけど、さすがに約束ブッチはアカンな。はぁ〜」

「まぁ、もうエエやん。勝利の祝杯といこうぜ」

「俺は酒嫌いやからいらんぞ。水でエエ」

「タケシってノマへんの?」

「そやねん、石井。タケシは酒嫌いなんやて」

「アホ。お前らもまだ酒の味なんか分からへんやろ。1ミリも旨ないわ」

のちに大酒飲みになることは、この時はまだ知らない。

「1杯だけいけや〜」

「いらんて!! シバくぞ、坂井!!」





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アツいぜ
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