【第3部】第20話
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ジリジリジリジリ~♪ ターンターンタターン…♪

「よっしゃ!! モーニングゲットやで」

「エエなー、タケシ。俺は3台打ったけど空振りやわ」

「もう空き台もないし、残念やったな」

「なんでお前いつも分かるねん」

「なんとなくそうちゃうかな、っていう予想はあったけど、今日で確信に変わったわ」

「言うてくれよ!! お前はいつも自分だけエエ思いしてホンマに!!」

「いやいや、あやふやなこと言うてモーニング取り損ねたら悪いなと思うやん」

「ちょ、はよ教えてくれよ。その秘密ってのを」

「ちょい待ってくれ。このBIG終わったら即流しするから」

「ほな、俺はマジカペでも打って待ってるわ」

「あいよ」


そして俺はBIG1回分を即流し、5500円ほどの銭をポケットに突っ込み、ヒロの待ってるマジカペのシマへ向かった。

「おっ、ヒロ出てるやん」

「200円でVぶち込んだったわ」

「俺も打とうかなー。でも、なんかあんまり開いてないな、今日」

「そやろ。ヤメとき。俺もヤメてこれタバコに変えるわ」

「ほな、外でタバコでも吸っとくわ」


俺は駐輪場の端でタバコを燻らしながら、ヒロの大当たり消化を待っていた。

「なぁなぁ、自分いっつもモーニングとってるけど、サクラなん?」

「ん? ちゃうちゃう。たまたまやで」

「ふーん。そうなんや」

当時、この店は10台中、3台くらいスーパープラネットのモーニングが仕込まれており、毎朝5、6人ほどで争奪戦を繰り広げていた。声をかけてきたこの男もよく見る顔だ。


確かに俺はかなりの確率でモーニング台を奪取していたので、サクラと思われていてもおかしくはなかった。

「ごめんごめん、タケシ。タバコ、1カートン取れたわ!!」

「よかったやん」

「で、さっきのヤツ誰?」

「あー、ほれ、モーニングのときによくおる奴やん」

「アイツらかー。なんか言うてきたん?」

「いや、サクラなん? って」

「アホやな。まぁ、確かにそう思われるぐらいピンポイントで取ってるもんな」

「ちょっと移動するか? ミラノでも行こか」

「エエやん、行こか」

ミラノというのは、半溜まり場になっている喫茶店で、俺らはお互いのバイクでミラノへ向かった。


「おっ、今日も相変わらず空いてるなー」

「またうるさいのが来たな。アンタらホンマに学校行ってないな」

「マスター、学校は適度に行けばエエのよ。俺らは日銭を稼ぐ方が忙しいからな」

「ろくな大人ならんぞ、お前ら」

「とりあえず、アイスコーヒーちょうだい」

「なぁなぁ、タケシ。モーニングのカラクリ教えてや」

「気づかんか、なんにも?」

「気づくもなにも、昨日はココやったから今日はアッチかな、ぐらいやけど、場所に法則性あるんか?」

「場所ちゃうねん。出目や出目」

「出目って、バラバラやんいつも」

「ちゃうねん。アレな、ばらけ目に見えるけど、リーチ目仕込んどんねん」

「リーチ目?」

「そうや。右リール、プラム・オレンジ・ベルとかのマニアックな出目をわざと作ってるねん。それがモーニング仕込んでるサインってわけよ」

「なんでそんなことするん?」

「そんなん俺は知らんけど、多分、店長がパチスロ好きとかそんな理由ちゃうか」

「なるほどな。どうりで一発でモーニング台を見抜ける訳やな」

「半信半疑やったけどな。今日2台は見つけて、それらも当たりやったから」

「それを教えてもらっても、俺、タケシみたいにリーチ目そんな知らんしな」

「余裕あったら、見つけたときは教えてあげるけど、ライバルたちも必死やからな」

「とりあえず明日、やってみるわ」


次の日。

俺はすぐにリーチ目台を見つけて、難なくモーニング台をゲット。一方、ヒロは引っ掛け出目に惑わされ、今日も空振りしている。

「アカン。カラクリ知ったらなんか腹たってきたわ。店長に遊ばれているようで…」

「遊んでるやろうな、これは」

「とりあえず、俺は今日も即流しして帰るわ」

モーニングBIGを消化し、コインジェットへ流そうとしたら、何やら張り紙が貼ってある。

『11:00まで交換禁止』

「なんやコレ!! モーニングの意味ないやないか!! これ打つの嫌やな…」

「タケシ対策ちゃうか?」

「これはやり過ぎやろ。モーニングの意味ないやんけ。もう終わったなこの店も」

「まぁ、それなりに稼いだから十分やろ」

「明日からまたモーニングやってる店探さないとやな」

「結局、俺は全然、この店でモーニング取れんかったわー。腹立つわー」

「ははは」

他の地域は分からないが、ここ最近、モーニング対策として即流し禁止のホールが増えてきていた。

モーニングは2号機のバニーガールから3号機時代、4号機のニューパルやチェリーバーあたりまでホールのサービスとして長きに渡り残っていた。今となっては懐かしい思い出だ。