■第17話:エピローグ
ホールやお客を守るという信念

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その夜のことだ。

余りにも長い1日が終わろうとしていたが、仕事終わりに主任から声をかけられ、居酒屋で少し話すことになった。そこで主任から問われた言葉は、今もこの胸に残っている…。それくらい重い問いであった。この一言を思い出す度に、今でも複雑な気持ちになるのだ。

「お前が来たせいで長年一緒に働いていたみんなが辞めて行った。お前はこれで満足なのか?」







結果だけ見れば主任の言う通りである。部長に始まり、マネージャー、そして罪のないマネージャーの奥さんまでもがこのホールを去ることになってしまった。マネージャーについては自業自得だと思うが、他の2人については、自分が運命を変えてしまったかもしれない。俺が釘師を目指してこの店に来なければこんなことになっていなかっただろう。

「でも…」

もう俺は入社した当初の弱い自分ではなかった。なによりも釘師になるという夢を果たしてもいないし、恩人たる部長はこんなことで挫ける自分の姿を見たくはないはずだ。


俺は主任に向かってはっきりと言い返した。

「満足かどうかなんて関係ありません。どんなことがあっても、最後までやり続けているヤツが、俺は一番だと思っていますから」

主任はその言葉を聞いて何か考えているようだったが、言い返すこともなく、しばらくしてゆっくり何度も頷いていた。俺もそれ以上何も言わなかった。


これは強がりから出た言葉ではなく、自分自身に対する覚悟のようなものだったろう。もちろんこれらの出来事に心の痛みも感じはするし、別のやり方があったのかもしれないな、とは思う。しかし間違ったことをしたつもりはないし、自分に恥じることをしたつもりもない。

おかげで、この一件があったからこそかとも思うが、今でもホールやお客を守るという信念はブレていない。それこそ、この覚悟や信念が揺らいでしまっては、ここまで払ってきた犠牲が無駄になるというものである。そんな思いが多少の癒しになっているのかもしれない。

新店舗での思わぬミッション

それから半年ほど経ったろうか。我流ではあったが、日々釘の練習にも励んでいた。釘調整という部分も含め、多少は力もついてきたという自負もあった頃、俺はチェーン店の副店長に任命される。

女オーナーから社長室に呼び出され、そこで辞令が下ったわけだが、最後まで話を聞いて唖然としてしまった。

「そこの店長に問題があってね。実態を調べてクビにして欲しいのよ…」