俺は叫びたい衝動を抑え、その気持ちをすべて右手に託した。これで仲間をメガトロンの島に呼び寄せるのだ。これは、「俺が右手を上げたらヤツを羽交い絞めにしろ」という、あのサインである。
大丈夫。みんな気付いたらしい。スタッフが方々からナカムラのいるこのメガトロンの島に向かって走ってくるのが見えた。
「よし」
覚悟を決めた刹那、俺は飛んでいた。島の上からナカムラに飛びかかった。今、こうして振り返ってみるといかにも向こう見ずだし、随分危険なギャンブルを仕掛けたなとは思うが、この時は躊躇なくフライングをキメていた。
しかしその想定不可能さは、敵にとっては効果覿面である。ナカムラは、これまでに見たことのないほどの恐れを目に湛えており、激しく動揺しているのが手に取るよう分かる。まぁ島の上からいきなり人間が降ってきたのだから無理もないだろう。
俺は奴の動揺をせせら笑い、こいつの首根っこを正面から両手で掴んだ。そしてそのまま島の通路にねじ伏せて馬乗りになる。ナカムラは何か言いたそうだったが、俺が首を絞めている格好になっているのでしゃべることはできない。今度は俺が威嚇する番だ。
「犯罪だからやめろって言っただろうがっ!」
そう耳元で激しく叫び、ジタバタするヤツの首を更に強く抑え込んでいた。
馬乗りになって…
興奮状態にあった俺はすでに想定外の嵐の中に放り込まれている。計画としては、暴れるナカムラをみんなに止めてもらおうと思っていたのだが、マウントポジションから危害を加えようとしているのは、外形的には俺の方だ。