■第14話:覚悟 班長編
台のすり替えによって発覚した不正は…

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表面的には何も変わらない。いつも通りの慌ただしい日常は刻々と変化し、そして淡々と過ぎ去っていく。

しかしこの一見平和に見える日常にも大きな変化がすり寄ってきている。じっと待ち、今日をやりすごすだけで、大団円は向こうから勝手にやってくるだろうが、果たしてこれで満足して良いのか…。

台のすり替えによって発覚したマネージャーの不正。俺はこれをもって幕引きとすることもできたが、それだけでは足りないと感じ、次なるターゲットに狙いを定めた。

もちろん照準の先にはナカムラがいるのだが、奴を仕留めるにはどうすれば良いか、まだ考えはまとまっていない。俺は意図的にナカムラの視界から外れ、気配を消した。そして島端から奴を監視し続ける。殺気立つ気持ちにブレーキをかけながら…。


そうとは知らず、この日もナカムラは全力で絶好調である。遠目で見ていても分かるくらいに奴は苛立ち、迷惑極まりない怒気を周囲にまき散らしているではないか。

…そりゃあそうだ。奴が打っているのは俺がすり替えておいた回収台。節穴野郎はそれを甘い台だと信じ切っているのだから世話はない。昼過ぎまで打ってもまだ当たっていないとなると、恐らく3万円近くまで負けているのではないか。

奴はいつ当たってもおかしくないと思って打ち込んでいるのだろうが、そうそう当たらないだろう。身にまとった苛立ちはオーラの如く刻一刻と巨大化していき、いつも仲良くしている常連客までもが奴に話しかけるのを憚られるほどだ。

ナカムラの仕上がりが決起を促す

しばらくすると、ドカっとナカムラは立ち上がり、苛立ちを隠そうともせずナンバーランプを激しく叩いた。近くを通りかかった店員が対応に入ったのだが、離れて見ているこちらまで聞こえるぐらいの怒鳴り声で叫んでいる。

「金返せっ!」

「警察呼ぶぞ!」

ナカムラはひとしきりわめき散らして疲れたのか、やっと対応していたスタッフを解放した。散々奴の文句を聞かされたスタッフはすっかり顔が歪んでしまっており、戻ってくるなり「やってられねぇ」と俺にひと言こぼし、一服休憩へと消えていった…。一方のナカムラはといえば、食事札を出してさっさと店を出てしまっている。


このやりとりを遠巻きに見ていると、やはり俺は行動を起こさずにはいられなくなった。

「あいつは癌でしかない」

俺は最後の仕上げに取り掛かる覚悟を固めた。


昼の1時過ぎ。この時間になると決まって奴は食事札を取っていた。自宅に戻って食事を摂ることを習慣としていたのだ。

チャンスは今しかない。そう心を決め、奴が完全に視界から消えたのを確かめるなり仕掛けに入る。
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