翌朝は早番シフトのため6時起床。2時過ぎまでラーメンを食っていたせいか、胃がもたれてしょうがない。しかし手早く着替えて店に向かい事務所のドアを開けると、そこには、すでに出勤していた女オーナーの姿があった。
「アタマキタさん。今日はずいぶん出勤が早いのね?」
そう笑顔で話しかけるオーナーに対し、俺は会話を断ち切るように、いつになく真剣なまなざしで切り出した。
「今日はマネージャーの不正についてお話をしたく、いつもより早めに来ました」
一瞬にして和やかな雰囲気は霧散し、室内は身を切るような鋭い緊張感に支配される。明らかに顔色が変わったオーナーは、無言で社長室の扉を開け、部屋の中へ入りソファーに座るように指示をした。
ゆっくりとした動作で俺の前に座った彼女は、威厳ある態度で口を開く。
「どういう事なのか、聞かせてちょうだい」
俺は覚悟を決めて話を始めた。
「マネージャーのことなんですが…常連客であるナカムラ氏とツルんでいる可能性があります。どう見ても不審な行動があって、それを裏付けるような行動を昨日確認しました」
一気にまくしたてたせいで少し息苦しくなった。
(ふー。)
ここで軽く一息つく。少しばかりの落ち着きを取り戻し、これまで起こったこと、自分が感じたことを順を追って細かく女オーナーに説明していった。自分としては筋が通った話をしたつもりだが、興奮しているせいもあって真意が伝わっていないかもしれない。大丈夫だろうか…。
俺の直訴が終わるなり、オーナーは俺の方をキッと睨み付けた。
「実は私の方でもおかしいと思うことがあって調べていたの…」