■第9話:昇進 ホール店員編
1日15時間の過酷な勤務に耐えて…
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第9話:昇進 ホール店員編
部長がいなくなってから2カ月が経とうとしていた。マネージャーから連日様々なプレッシャーや嫌がらせを受けていたが、それはもちろん承知の上でこの会社に残ったのだから弱音など吐くことはできない。ひたすら仕事に没頭することでどうにかやり過ごすことができたというものだ。今振り返ってみても、二度と同じことはできないだろうなと、当時の自分を褒めたくなる。
その頃のパチンコ店というのは、早番と遅番にシフトが分かれており、早番は9時から17時まで、遅番は16時30分から24時までという交替制。俺のいたホールは20人ほどでそれを回していく小さなホールだった。
しかし店はいつも混雑しており、特に夜になれば稼働が8割を超えるという、いわゆる大繁盛店だった。そこで俺は自分の能力を磨くこと、そして上司から信用を得ることを第一に考え、自ら志願して『通し』というシフトをぶっ続けでやっていた。
通しとは、食事休憩だけ昼と夜の2回45分ずつ与えられるが、9時から24時までぶっ通しの15時間勤務のことで、もっとも過酷な勤務である。しかも社員の月給は固定給だったため、7.5時間をサービス残業しているような状態だ。これを俺は黙々と続け、さらに人が嫌うような重労働も自分から買って出た。
初めは、「部長がいなくなって必死だなぁ」と冷笑され、嘲笑され、小馬鹿にもされたが、それでも継続していけば周りの見方は変わってくるものだ。いつしかスタッフの中から、あいつは凄いと認められるようになっていったのだ。
そんなある日のこと、オーナーから呼び出しがかかった。すぐに事務所に向いオーナーの部屋に入ると、そこにいたのはオーナーだけではなく、浮かない顔をしたマネージャーの姿もあった。
俺はオーナーに対して諍いなどないのだが、むこうからしてみれば、自分が預かり知らないところで良く分からない人間が入社していたという捉え方だろう。入社当初は部長の仲間のような扱いだったため、オーナーから煙たがられているのは分かっていた。しかし、タイムカードの管理をしているのがオーナーの娘だったのだが、彼女は勤務状況をしっかりと女社長に報告していたようだった。そして、俺の勤務状況や態度について周りからヒアリングをした結果、どうやら俺を見直したらしい。
代償の先に得た信用の価値
女社長は俺を近くに呼び寄せるとゆっくりと話を始めた。