【第3部】第13話
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―初めてのパチスロデート。


ピロピロピロ〜ティーン。ピロピロピロ〜ティーン。ジャラジャラジャラ〜。

「よう、ニイちゃん、今日はパチンコかいな」

「さっきまでタカラホールでパチスロ打ってたんやけど、サッパリやしヤメたわ」

「なんや真面目に単発打ちなんかダルいことして」

「エエねん。時間なんてナンボでもあるし、これはよう回るから保留を空けといたほうが得やしな」

「ほな、まずは当てなアカンな。ほなまた」

俺はここら一帯のホールでは馴染みの顔となっていたので、いつもこうして誰かしらが声をかけてくる。名前も年齢も職業も知らないが、ホールで会うだけの馴染みはたくさんいた。

そして俺がこの時期、ハマっていたのがSANKYOの「フィーバーボルテックスU」だった。


盤面中央に大きなルーレットがあり、真ん中には小さなデジセグが配置されている。

まず最初はチャッカーに玉を入れ、大きなルーレットで0〜9を決める。その後、そのルーレットの数字と中央にある2つのデシセグが全て同じ数字になれば大当り。見た目とは裏腹に、かなりシンプルなゲーム性となっている。

そして何より俺がハマっていた理由は、保留連チャンを誘発できる攻略法があったからだ。

その連チャンの仕組みを説明しよう。

大当り直後から5〜6秒の間、スタートチャッカーに玉を入れると約50%で保留連チャン抽選を受けられる。回る台ならこの5〜6秒間に2個入れることも可能なので、連チャン率はかなり高くなるのだ。

そのため、通常時から保留に空きを作っておくのが鉄則だった(実際には保留を1、2個貯めるくらいなら問題はない)。

「アカン、よう回るけど当たらん、単発打ちがダルなってきたな。保留2個ぐらい貯めながら回すか…。んっ? 誰や」

右腰に装備しているポケベルが鳴っている。

「知らん番号? 気分転換がてら外に出るのもエエな」

当たらないフィーバーボルテックスUの席から立ち、電話をかけるべくホールの外に出た。道路を挟んだ向かいのたばこ屋前に公衆電話があるので、かけてみることに…。


プルル〜プルルー〜ガチャ。

「もしもし」

「(ん? 女?)もしもし?」

「あっ、タケシくん。カオリやけど」

「カオリちゃんか!! 誰かと思ったわ」

「どないしたん? 女の子やから焦ったんちゃう? 遊び人やなー」

「ちゃうちゃう。かけ間違えたんか思うたんやて。んな事よりどないしたん?」

「明日、日曜やん? この間言うてたスロデートどう?」

「言うてたけど、よう覚えてたな。エエで俺は」

「ホンマ? ヤッタ!! ウチがそっち行く?」

「んー、カオリちゃんの家って寝屋川らへんやっけ?」

「そうそう」

「ほな、そっち行くわ。ちなみに俺、小学5年生まで東寝屋川やったんやで」

「マジで!? この間、言うてくれへんかったやんか。ケチー」

「ケチて(笑)。あっ、明日は何時にしよか?」

「そやね…んー、9時30分ぐらいに萱島駅かやしまえきで待ち合わせする?」

「わかった。ほな明日な」

「楽しみにしてるな」

「んじゃ」

電話を切った俺は不思議な気持ちになっていた。

「アカン、なんやろ…いちいち可愛いな、あの子…」

「さて、一発あのアホ台を当てて連チャンさせな、明日の軍資金がヤバなってきたぞ」

秋とはいえ、夕方になると少し肌寒い。薄着だったので駆け足でホールへ戻った。


手持ち金も少なくなってきた俺は、いよいよ終わりか…と諦めかけたが、その時ようやく大当りを引き当てる。チャッカーが開く数秒前から打ち出し、なんとか保留に1つだけ玉を打ち込むことができた。

そして大当り消化後、「お願いやから連チャンフラグ引いててくれ」と祈るように保留ランプを凝視する。1つ目はハズレ。2つ目でリーチが発生。

「アツい!! マジでアツい!! 頼む頼む!!」

すると、そのリーチで見事、数字が揃って大当り。そこから、都合10連チャンほどぶちかまし、約28000発を換金して、ご機嫌で帰宅した。


「カオリちゃんか…タイプはタイプやけど、向こうはどうなんやろうな。彼女になってもあの子やったらパチスロに理解ありそうやし、上手くいきそうやな。まっ、それより、萱島駅らへんのホールにはどんな台置いてるんやろ、気になるわー」

俺はパチンコとパチスロに脳が侵されていたので、彼女ができても誰1人として長くは続かなかったが、今回ばかりは上手くいくかもしれない、いや、それ以前にカオリちゃんはただ単にパチスロ仲間を作りたいだけなのかな、と考えているうちに夢の中へ迷い込んでいた。


次の日。

「おっ、おったおった。カオリちゃーん」

「あれ? タケシくん? バイクに乗ってんねや。てっきり電車で来る思うたよ」

「そうやねん。今は色々あって原チャリだけなんやけどね」

「もしかして大きいのも乗ってるん?」

「一応な。今は手元にないんやけど、戻ってきたら見したるわー」

「見したるって!! 乗せてよアホ!!」

「そ、そやな…。(なんやろこの子…俺に気があるんかな。積極的な性格やからよう分からへんわ)」

「地元の人らに聞いたら、駅前のココが出るらしいから、ココでエエ?」

「めっちゃ駅前やん。エエよ全然。ほな裏にバイク停めてくるから待っといて」

「うん」

俺はバイクを適当に停め、カオリちゃんの待っている表側へ向かった。するとカオリちゃんは2人の男と談笑している。嫌な予感はしたが、構わず俺は声をかけた。

「バイク停めてきたで。友達?」

「うん。同じ地元の知り合い」

「こんにちわ」

「あー」

「おー」

「(なんやコイツら、喧嘩売ってんのか)」

「カオリちゃん、誰?」

「この間、仲良くなったタケシくん」

「ふーん」

「行こか、カオリちゃん」

「うん。じゃ」

俺はカオリちゃんとホールから少し離れた場所に移動した。

「なんなんアイツら。我慢したけど」

「ごめんなタケシくん。元カレの友達やねん」

「そうなんやな。まっ、カオリちゃんの地元やし、普通におるわな」

「怒ってる?」

「怒ってへんけど、ムカつくヤツらやなって。でも、揉め事は今まで色々あって懲り懲りやから大丈夫(笑)」

「よかった、笑ってくれた」

「まぁ、とりあえず今日は勝って旨いもんでも食お」

「うん!! 教えてな先生」

「誰が先生やねん!!」

「ふふふふふ」

朝から不穏な空気が流れていたが、カオリちゃんといるとそれを中和してくれる独特な雰囲気があった。とはいえ、地元じゃない場所だとロクなことが起きないので、まだまだ気を抜くことはできなかった。

このままスロデートはうまくいくのか!? 嫌な予感が的中しないことを祈るばかりである…。





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アツいぜ
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