【第3部】第2話
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俺は少しだけ早足になり、ホームを歩く人を避けながら目的の男に近づいていった。近づくにつれ、男の身長は俺より少しだけ小さく、ツンツンに立てて伸びかけの髪が茶色く染まっていることがわかった。

「おい!!」

声をかけると男の肩がビクッと震えた。ゆっくりと俺の方へ振り返る。

「ほら、やっぱりそうや、お前カッキンやろ!」

「そ、そうやけど…」

カッキンは俺の姿を上から下までサッと確認した。少しだけビビってるような目をしていて、俺もカッキンの顔や格好をざっと観察。さっき坂井が『スポーツマンが今日から不良になりました、みたいなヤツやな』と表現していたが、まさにそんな感じだった。

短ランにボンタン、茶髪のツンツン頭――なのだが、眉が太くてゴツゴツっとしたジャガイモのような顔に全く似合っていなかった。治りかけのニキビとやや色黒の肌があいまって、『スポーツ好きの中学生がイキっております』といった解説文がついていそうだった。

「…タケシ君?」

ようやくカッキンも俺を思い出したようだ。

「タケシ君かっ!!」

目を見開き、嬉しそうな表情が顔いっぱいにひろがった。

「そうや!! カッキン、久しぶりやなー!!」


その時、後ろから来た坂井が俺の肩に手をかけた。

「おぉ坂井、俺の小学校の時の1つ下で、カッキンて言うねん。一緒の少年野球のチームに入ってたんや」

俺がそう言うと、カッキンは坂井に対して頭を下げて挨拶した。その態度と声はもろに体育会系だ。

「木村と言います。こんにちは」

「そうか、こんにちは。いやでも、タケシが野球やってたって? ……それは嘘やろ。信じられへん」

「なんでやねん!! 信じられへんとまで言う根拠は何や」

「だって…なぁ?」

坂井はカッキンに向かって同意を求めた。その言葉を聞いたカッキンは、坂井と一緒に俺を上から下までじっくりと見た。そして2人は同時に噴き出した。

改札を出て、駅前にある自動販売機でコーヒーを2本買い、1本をカッキンに放り投げた。坂井が「俺のが無いで」と言っているが無視しておく。

「お前、この辺に引っ越したんか?」

俺はガードレールに腰かけながらカッキンに尋ねた。

「そうやねん。小5の時」

そう答えてからカッキンは一口、コーヒーを飲む。

「引っ越してから音沙汰ナシやったけど、まさか高校で会うとはな」

俺がそう言うと、カッキンは驚いてコーヒーを吹き出しそうになった。

「えっ? タケシ君もS工業なん? マジで!?」

「そうやで。ほんで何や…お前もそんなヤンキーほやほやみたいな格好してからに。野球ヤメたんかいな」

俺の言葉に、カッキンは少し俯き気味になった。

「いや、まぁー、うん。ヤメた……。そんなことより、タケシくん達は今からどこ行くん?」

「あー、コイツの地元に攻略法ができるパチンコ屋があるから行こう思うてな」

俺が坂井の方を顎で示すと、カッキンもそちらに視線を送った。坂井は誰に頼まれたワケでもないのに缶ジュースを一気飲みしている。

「パチンコとかした事ないな、俺もついて行ってエエかな」

恐る恐る…という感じでカッキンは訊いてきた。一気飲みが終わった坂井は、問題ナシやで、といった感じで頷いている。

「かまへんけど、ほな来るか」

「うん」

俺ら3人はパチンコ屋へとぶらぶらと歩き出した。


天気もよく春らしい気温のなか、大きめの幹線道路をひたすらに真っすぐ進んでいく。カッキンは俺と堺の少し後ろをついてきていた。

「なぁー、坂井、めっちゃ遠いやんけ。どこまで歩くねん」

「あと10分ぐらいや」

「クソ遠いなオイ…」

その時、チャリに2人乗りのヤンキーが前からやってきた。フラフラと左右に揺れるように乗りながら、何が面白いのか大笑いしている。俺と坂井は、そのまますれ違おうとした。向こうの2人組はチラッと俺たちを見たが、そのまま通りすぎる。

その直後に、「おい! 木村!!」という声が後ろから聞こえた。

どうやらヤンキー2人組はカッキンの知り合いらしい。そら地元ならツレとばったり会うなんて珍しくもなんともないわな。……そういえば、何で俺、カッキンのことカッキンって呼んでるんやろ…木村って苗字やなのに……などとのんびり考えていると、チャリを運転していたニキビ面の方が、デカい声でこう言った。

「木村、お前なんちゅう格好しとんねん」

「エ、エエやろ別に」

俺はカッキンに近寄りながら声をかけた。

「友達かカッキン?」

「いや、同じ中学やっただけや…」

わざとらしくゆっくりとした動きでコチラを見るニキビくん。

「オタクら誰ぇ〜?」

俺はそのマンガで見るようなヤンキーっぽい動きにちょっと笑いそうになったが、こらえつつ答えた。

「俺はコイツの先輩や」

「ほな、野球の人かいな。それにしても見た目が…」

ニヤニヤしながらニキビくんはそう言った。俺と坂井の格好をじろじろとみている。ツレかと思ったが、カッキンはどうやらコイツらに会いたくなかったようだった。こんなとこで時間を食うのも面倒だし、さっさとパチンコ屋に行きたかった俺は、「俺は野球はやってへんねや。ほな行こかカッキン」と言いながらカッキンの肩を掴んで引っ張った。

「うん…」

カッキンも俺の動きに合わせて歩き出す。

チャリの2人は無言のまま、俺たちを見ていた。しばらく歩くも、まだコチラを眺めている気配を背中で感じていた。そして、20メートルほど離れた時だろうか、背後からガナリ声が飛んできた。

「木村ぁー!! あんまりいちびってたら痛い目みるぞ〜気をつけろよ〜」

アホくさ…。雑魚が言うセリフランキングの上位常連のヤツやん。そう思ったが、カッキンの顔色を見て俺は軽口を叩くのをやめた。





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アツいぜ
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