【第1部】第20話
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「はぁ? 黒田組は関係ないって一馬くん言うてたぞ」

「一馬くんって、あのお前の叔父さんが仕切ってるとこのヤクザの兄ちゃんか?」

「そうや。お前も会ったことあるやろ」

「あるある。俺がめっちゃビビってたらピーチネクターくれたあの優しい兄ちゃんな」

最初の大川失踪(マナミの狂言だったが)事件のとき、俺と柿本は情報収集のため、叔父さんの事務所に行った。一馬くんの舎弟の浩二くんが、黒田組におるヤツの先輩だったため、電話までして攻略法の軍団とは関係ないと確認してくれてる。どういうことや。

「おい、ヒロ!! 戻れ!! 牧のとこ行くぞ」

「マジかお前。ヤーさんとおるんやぞ」

「かまへん、行くぞ!!」

「お前が一番むちゃくちゃやわホンマ」

呆れながらエンジンをかけ、バイクで黒田組の方へ戻る。と、隣の駐車場でヤクザらしき男と牧が談笑をしていた。

「ヒロ、バイク停めろ」

「嫌やわホンマ…」

ため息をつくヒロ。俺はヒロをほうって牧の方へと近づく。ヒロもついてきてるようだ。俺に気がついた牧が半笑いで俺に声をかけてきた。

「あれー? タケシくんやん」

俺は牧のすぐ近くまで来て、立ち止まった。

「お前にちょっと聞きたいことあんねんけど、ちょっとええか」

牧はニヤニヤしながら答える。

「またタイマンごっことか勘弁してや〜」

「ええからちょっと来いや」

隣にいた、パンチパーマで分かりやすい見た目のヤクザが俺を睨みつけながら口を挟んだ。

「なんやこらガキ、どこでいちびっとんねんコラ」

「いや、あんたは関係ないから黙っててや。俺はコイツに用があんねん」

ヒロは俺の耳元に小声で言う。

「ヤメとけお前、ヤクザ煽ってどうするねん」

「煽ってへん。関係ないやん」

パンチヤクザは激昂した。

「ワレコラ!!」

その声を制すように、牧がニヤつきながらパンチヤクザの両肩を押さえ、怒りをなだめている。

「吉岡さん、スンマセン。俺からキツくお灸据えときますんで」

パンチヤクザは牧の背中越しにまだ怒鳴っていた。

「オイ!! 顔は覚えたからな!! どっかで会うたら覚悟しとけよ!!」

そう捨て台詞を吐いてパンチヤクザは事務所へ戻っていった。牧があらためて、俺たちのほうを振りかえる。もちろん半笑いの表情のままだ。

「お前も敵作るん好きやな〜。で、何の用やねん」

「お前、攻略法の打ち子使って、その集めた金を黒田組に上納してんのか?」

「はぁ〜? なんのことかな〜?」

「とぼけんなやカス!! お前、金子の名前を使って手広くやってるんやろ」

「アイツはなんも関係あれへん」

「そうやろな。お前が勝手に名前使ってるだけやろうし」

「なんやねんお前、それがどないしてん。俺がどう金作ろうがお前には関係ないやろが」

確かにそうや、俺はコイツをシバきたい、その一心だけでここまで乗り込んできた。しかし、それともうひとつ聞いておきたいことがあった。

「お前、なんで俺のこと知ってたんや」

その言葉を受けて牧はニヤけ顔のまま口を開く。

「あ? そんなことか……お前、この辺のホールまで新装とかあったらよう打ちにきてたやろ? よう勝ってんの見ててな。後輩に調べさせたんや。打ち子のリーダーにでもなってもらお、と思ってな。そしたら、偶然にも大川がお前と知り合ったみたいやからよ、仲良くしようと思っとたのに…なんやいつの間にかえらい憎まれてもうとるがな、俺。人気者はツラいわー」

「しょうもな。で、お前、なんで黒田組に金落としてんねん」

突然、牧の口調が変わった。

「お前な…何やさっきからコラ!! ツレちゃうぞカス!! 気軽にアレコレ話しかけてくんなや。また病院送りにされたいんか? んっ、よう見たら金子ゴリラにヤラれた兄ちゃんもおるやんけ、2人がかりやったらお前らでも勝てんちゃうけ? やるか? ん〜っ?」

ヒロがぐっと俺の肩を掴んだ。

「タケシ、コイツ俺にヤラせてくれや」

「お前は黙っとけて」

牧はいつの間にかニヤけ面に戻っていた。

「ええぞええぞ俺は〜。お前よう見たらビーバップのヒロシみたいな頭しとんな。火の玉くん、やろうぜ〜。ハハハハハ」

「クソ金髪が!! タケシ、頼む。ヤラせくれ」

「ヒロ!! 落ち着けや!! コイツは俺がやる。借りがあるのは俺や。黙っといてくれ」

ヒロにそう言い終えるや否か、牧のハイキックがこめかみめがけて飛んできた。俺は半歩下がる余裕はなく、左手を顔の横で折り曲げ、なんとかガードしたが、肘の辺りがビリビリと痺れている。

「何やコラ!!」

俺が声を上げたと同時に、すぐさま牧は後ろ回し蹴りでまたこめかみ辺りを狙ってきた。今度は軽く上体だけを後ろへ反らし、ボクシングでいうところのスウェーのような形で二の矢を回避した。

顔面の前を横切る牧の踵を見送り、そのまま反撃に出ようとした瞬間、牧は素早い動きで一歩引いた。距離の取り方も完全に玄人だ。喧嘩慣れしているのか空手の段持ちなのかわからないが、ムカつくがコイツは喧嘩が強い。俺も半歩下がり軽く深呼吸をする。

「お前、避けてばっかりやんけ!! やろうぜバチバチの殴り合い」

真正面から正攻法でツッコんでも勝てないのは、嫌になるほど理解していた。悔しいが認めるしかない、と。作戦を練る間もなく三の矢が飛んでくる。

牧は鋭い角度で右のローキックを放ってきた。咄嗟に俺はキックをガードするわけでもなく、牧のスネ辺りを前蹴りで跳ね返す。バランスを崩した牧に飛びつき、無我夢中で俺は組みついた。どんな形になってるのかさえ分からないほど必死だった。

とりあえず牧を地面に叩きつけることに成功し、馬乗りになって左手で首を締めながら右手で牧の鼻めがけて鉄槌を何度も叩き落とした。牧は俺をどかそうと必死だ。そんななか、一発だけだが鼻へ命中した。

ゴドゥン!!

鈍鈍い音が鳴り響いた。

拳に伝わる感触で鼻の骨が折れたのはわかった。ヒロが俺の襟首を持ち上げ、何か叫んでいる。

「ヤメろ!! もうええタケシ!!」

「はぁー、はぁー、はぁー」

牧は四つん這いになり、鼻を必死に抑えながら呻く。

「殺す、殺したる、殺したるからな、お前…」

念仏のように下を向きながらそう何度も呟いている。オラーッ!! と己に気合いをいれるように牧は立ち上がり、俺の髪の毛を上から鷲掴みにした。

抵抗する間もなく、牧は顔面めがけて膝蹴りをぶち込んでくる。両手を顔の目の前でクロスにし、なんとかガードすることはできた。と、ヒロが牧に飛び蹴りをかます。俺の髪の毛がブチブチッと抜けるほど強く掴んでいた牧だったが、勢いに押され後方へ吹っ飛ぶ。

「コラ金髪!! 決着ついとるやろが!!」

「あぁーっ!? なにが決着じゃコラ!! これからやろがボケ!!」

その時、黒田組の前に黒塗りのベンツが停車した。ウィーン、静かに後方席の窓が開く。そこから顔を覗かせていたのは一馬くんだった。





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アツいぜ
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