【第1部】第4話
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ほとんど何も聞いてない授業も終わり、さて帰ろうか、と校舎を出る時、ふと三池の件を思い出した。このまま帰ってもどうせ暇やし、ちょっと見物したろうか…という気分になってきた俺は、帰る方向とは逆の電車へ乗り込み、京橋駅へ向かうことに。

駅を降り、ブラブラと栗谷の言っていた場所を目指していると、目の前にヒロが歩いている。若干テンションが上がっていたのか、険悪な関係になっていたことを俺はすっかり忘れていて「ヒロ!!」と呼び止めてしまった。ここで気付くがもう手遅れだ。ヒロも少し戸惑っている。

「オ、オウ」

もう引き返せない。何もなかったように普通に話し掛けるしかない。

「お前も決闘場に行くんか?」

俺は少しバカにしたような口調で言った。

「見に行くだけや。お前こそ番長とタイマンでも張りに行くんか」

ヒロもバカにした口調で言い返してきた。

「やるかアホ!! んっ、アレちゃうかヒロ?」

「オイオイ、めっちゃ人多いやんけアッチ。どないするよ」

「まぁー、とりあえず行ってから考えよか」

呑気なことを言いながらも、2人とも参戦する気満々である。その証拠に、俺は気づかぬうちに指を鳴らしていたし、ヒロは運動前のストレッチのように首を回していた。


決闘場ではすでに大勢が暴れていた。足を一歩前へ踏み出すたびに鼓動は高鳴り、脳からはドーパミンが溢れだしてくる。興奮状態が頂点へ達するのと同時に、突如として視界がクリアになり、目の前の光景を客観的に捉えることができた。テレビで観る乱闘シーンみたいやな。怒号が響き渡り、制服の違う者同士が入り乱れ、土煙が舞い上がっているアレにそっくりや。

俺とヒロは一瞬だけ目を合わせた。ヒロは腹の据わった顔つきのまま乱闘へ飛び込んでいく。それを横目でちらっと見た後、俺は自分でもどこから出ているのかわからないような怒号を上げ、乱闘に加わった。

どんなヤツを殴ったのか殴られたのかなんて覚えちゃいない。誰にも恨みすらないのだから。とにかく俺のやるべきことは、無我夢中で四方八方にいる、見知らぬ制服をやっつけることだけだ。

「ポリやっ!!」

誰かが一言そう叫んだ。

一秒前まで殴り合っていた輩は、敵味方関係なしに蜘蛛の子を散らすように逃げ惑った。俺もどれだけ走ったのだろうか、見知らぬ住宅街の影にしゃがみこみ、くしゃくしゃになったタバコを取り出し火を点けた。ヒロも勝手にどこかに逃げたのだろう、こうなったらこの街にいる理由はひとつもない。

小休止をすませ、呼吸も整ったところで帰路につくことにした。地元の駅を降りると、隣町に住む柿本とそのツレらしき数人がたむろっていた。


柿本とは工業高校で知り合った、なんとなく顔見知り程度の仲である。入学からたった一ヶ月で高校を去ったので、あまり深い話をしたことがない。くわえて今の俺は満身創痍だ。無視が一番、と下を向いて改札を出た瞬間。

「タケーシ!!」

柿本が下品な声でそう叫ぶ。

「おー、柿本やんけ…」

俺は露骨にイヤそうな態度をとったが、アホの柿本には空気を察知する能力が残念ながら、ない。

「タケシ、よう見たらなんでそんな泥だらけやねん。お前唇も切れてるやん!! なんや喧嘩け!! 誰や相手?」

「ハハ、よう分からん。ほなまたな」

そうだった。柿本と喋っていると疲れるのだ。

生粋のアホでヤンキー。普段はイイ奴なのだろうが、さすがに今日の俺は柿本を相手にはできない。帰ろう。

その時、柿本の隣にいたツレらしき一人が、「なぁー、自分、宝ホールにようおるやろ」と、声をかけてきた。確かに宝ホールはよく顔を出すパチ屋だ。

「そうやな。なんで?」

「いや、いっつもおるなーと思っててん」

ここで空気を読まない柿本のカットイン。

「んっ!? お前ら会ったことなかったっけ? コイツ、大川っていう俺の地元のツレなんやけど、タケシと一緒でパチンコ、パチスロばっかやっとるわ。あんなん金もったいないからヤメとけ言うてんやけどな、俺は」

「柿やんは昔からケチやねん」

「誰がケチじゃっ!!」

すかさず俺も茶化す。

「柿本、タバコちょうだいや」

「持ってへん!!」

「持ってるくせに」

そう大川が言い、柿本と2人して笑い声をあげた。切れた唇が痛かったが、俺もつられて笑った。

ツレがツレを呼ぶというのか、中学を出てからというもの、こんな風に色々な人間と出会い、交友関係が広がっているという実感があった。ただ、それによって鬼が出るか蛇が出るか…16歳の俺には知る由もなかった。


次の日。目が覚めたのは夕方だった。よほど疲れていたのだろう。起きぬけにタバコの煙を肺に入れるが目が覚めない。体中に痛みもある。しばらくぼんやりした後、俺は昨日大川が口にした宝ホールへ行こうと思い立ち、バイクを飛ばした。

道中、近所の交差点で信号待ちをしていると、横の歩道をヒロが女と歩いていた。俺はバイクを停めて声を掛けようとした。だが、その時ヒロが完全に俺に気付いているはずなのに、見て見ぬふりをしていることに気がついた。

昨日の乱闘前、少し会話をしたのは、お互い興奮状態だっただけだからなのか…いや、もはやそんなことはどうでもイイ。

「まだスネてんのかコイツは…」

俺は苛立ちを覚え、バイクを発進させた。


苛立つ気持ちのまま、ホールへ入り、パチスロのシマの空き台をチェックする。デートライン銀河のリーチ目はマニアック目も多く、リーチ目のまま空き台になっていることも珍しくなかった。が、この日は空振り。

ふと、昨日会った柿本のツレという大川のことを思い出した。アイツも確か、この宝ホールによう来るとか言うてたな…。店内を軽く探してみたが、センター分けの金髪はいなかった。あんな派手な頭、見逃すはずもない。

特に打てる台もないので、早々にバイクにまたがり1号線の方へ出る。久しく行っていなかったコスモスホールへ足を伸ばしてみることにした。

20分ほどバイクを走らせ、この近辺では珍しい大型店のコスモスへ到着する。バイクのエンジンを切り、たらたらと歩きながら入店。

早速、パチスロのシマを覗いてみる。

「スーパーセブンとベンハーだけか…変わらへんな」

その後、パチンコのシマへと足を踏み入れると、とある台の姿が俺の目に飛び込んできた。





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アツいぜ
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