栄枯盛衰
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  1. なんか聞きたいことある?(アタマキタ)
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※2015年10月4日公開分です。


今年もいよいよ残すところ3ヶ月となったわけだが、パチンコ業界は激動の年となり、まだひと悶着もふた悶着も起こりそうな気配が濃厚である。

このコラムでも取り上げたが、パチンコについては、射幸性が高いと判断された従来のMAXタイプの発売はこの10月をもって終了となり、今後は1/320が大当たり確率の下限値となる。どのような機械が出てくるのかまだ見通せない部分が大きいが、当然、確率が上がった分だけ連チャンや出玉性能は落とさざるをえないと考えられるわけで、そういう意味では悲観的な意見の方が多い。そして来月にはパチスロの規制が待ち受けているということで、ホールとしてはかなり厳しい状況に立たされている。


ただし、行き過ぎたパチンコ業界にブレーキをかけるという意味では、俺は今回の規制は大歓迎である。実際にどのような環境になるのかは分からないが、かつてのような状況に戻るのであれば、まだまだ産業として生き残る道はあるのではないかと思っている。

今から20年以上も前の話にはなるが、俺が客としてパチンコ店に通っていた時は、そりゃあ面白かったよ。今のようなセブン機ばかりが設置されていたわけではなく、チューリップだけの普通機やヒコーキと言われる羽根物、3回セットの権利台や定量個数が店によって違う一発台など、どこの店にも様々なタイプの機械が設置されていた。

財布に3000円しかなければ、まずは羽根物で遊び、少し儲かったら一発台に挑戦する。そんなプランを考えながら楽しんだものだが、今ではパチンコで当てようと思えば最低3万円、はたまた5万円という時代になってしまった。

今となってはそんな環境など都市伝説だろうが、メーカーの方でも、古き良き時代のパチンコに戻れるような機械作りにチャレンジしてもらいたいものだ。


さて、前置きはこれくらいにして、前回の続き、機械の購入について書いていこうか。

今回はメーカーのショールームにまつわる話だ。機械の販売時期が2〜3ヶ月後に迫ってくると、メーカーは「内覧会」とか「展示会」といった形でホールのバイヤーをショールームに呼び、機械を披露することになる。

通常は各メーカーの営業所に呼ばれて機械を見せられることがほとんどだが、ビッグタイトルともなればメーカーの気合の入れ方も全然違ったものとなり、豪華ホテルで展示会が開催されることもあるのだが…。


「てめぇのところのクソ台なんか一生買わねーよ!」

これは俺が若い頃、とあるパチスロメーカーの所長に実際に浴びせた言葉である。この時、メーカーは相当に気合が入っていた。実際にホールからも注目されており、久々に販売台数も伸びそうな機械だったためか、営業マンのテンションも異常に高かったのを覚えている。

しかし…このメーカーのテンションが高い時はほとんどが勘違い(笑)で、後々の結果を考えてみると大コケしている確率が高いのだ。だから俺としてはあまり乗り気ではなかったのだが、それでも一応見ておかなければならないと思い、ショールームへと向かった。

入口から既に営業マンが待ち構えており、さっそく機械の発売時期やスペック、演出などの細かい説明を受けた。すると思っていたよりも機械のデキは良く、5〜6台くらいであれば検討しても良いと思い、お互い和やかな雰囲気となった。

そして一通り話も終わり、さあ帰ろうと思った時、営業マンが何やらチケットを渡してきた。聞けば、今回の展示会に来場した人にスピードくじを引いてもらい、豪華賞品をプレゼントする企画をしているとのこと。そして営業マンに促されるままショールームの入口のコンパニオンにチケットを渡し、抽選箱からくじを引いたわけだが…三角くじを開けてみると、なんと「特賞」と書かれているではないか!

ちなみに賞品はビデオデッキだったのだが、当時は5〜6万円はするものである。俺はこういうものとは縁がなかったのでちょっとビックリしたが、担当してくれた営業マンも一緒になって喜んでくれ、更に雰囲気が良くなった。そしてコンパニオンが商品を梱包するのを2人で待っていたのだが…そこに別の営業マンが現れ、何やらヒソヒソと話を始めるのである。

すると担当者が、

「ちょっと所長に呼ばれたので行ってきます。すぐに戻りますので待っていてもらえますか?」

そう言ってその場を離れた。上機嫌だった俺は待たされることも苦にならず、機械のカタログを見返して営業マンが戻ってくるのを待つことに。


しばらくして営業マンは戻ってきたのだが…戻ってくるなりいきなり俺に謝り始めるのだ。

「すみません、すみません」

何を謝っているのか俺にはサッパリ分からず、「どうしたの?」と訊ねると、気まずそうに説明を始めた。

「実は今しがた所長に呼ばれまして、アタマキタさんが当てたビデオデッキは無効だから返してもらえと言うんです…」

すっかり綺麗に梱包され、今まさに持ち帰ろうと腕に抱えていたビデオデッキを、俺は一度机の上に置いた。

「え? 一体どういうこと!?」

営業は困りきった顔で話を続ける。

「アタマキタさんのお店はあんまり機械を買わないので、もっと買っているお店の人に渡すのが筋だろうと所長に言われたんです。本当にすみません…」







(アタマイカレちゃってんじゃねーのかこの会社!?)

俺はビデオはどうでもよかったのだが、このメーカーはこのような対応を取るようなところではなかったところに強烈な違和感を覚えた。以前であれば、たとえ数台だとしても買ってくれるだけありがたいという姿勢であったからだ。ちょっと強気になれそうな機械が手に入ったら途端にこの対応である。

しかし怯えた顔で平謝りする営業マンに罪がないことは分かっていたし、そこは貸しをひとつ作ったと思えば良いと思い何も言わずに帰ろうとした。

しかし、まさにショールームを出ようとしたその時、さきほどまで奥に座っていた所長が出てきて仕事もせずにコンパニオンとエロ話をしているではないか…てめぇ! 完っ全っに…アタマキタ!

と、ここで冒頭のセリフを吐き捨てたわけだ。

「俺は機械を見にわざわざ来てやってんだよ! ビデオデッキなんかいらねーし、欲しけりゃてめえで金払って買うわ! てめぇのところのクソ台なんか一生買わねーよ!」

担当してくれた営業マンには申し訳なかったが、大勢の客がいる前で、怒髪天を衝く如しでぶちまけ、ショールームを後にした。もちろんその機械を自店に導入することはなかったが、運良くその機械はヒットすることなく早々とどのホールからも消えていった。

そして、"一生"というわけではなかったが、例の所長が在籍していた3年間はこのメーカーの機械を買うことはもちろん、機械を見に行くことすらなかった。


機械が少しばかり良かったりすると、メーカーってのはすぐに調子に乗るもんだ。これはいつの時代も変わらない。しかしそんな時は永遠ではないことを肝に銘じて営業して欲しいものだと常々思う。

また来週は別の話を書いて行くのでよろしくね。


アツいぜ
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