コーヒーレディ・E華さんの話[2]
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今週は編集Xさんが昔働いていたホールのコーヒーレディ、E華さんとのインタビュー後編です。ホールのお客さんとの間で起きたストーカー事件について話していただきました。


−前回のインタビューの続き−

窪田サキ(以下、窪)「で、そのストーカー、どんな人だったんですか?」

E華(以下、E)「見た目は普通の20代男性よ。最初は1日1杯コーヒーを頼んでくれる程度だったんだけど、それが2杯・3杯って頼んでくれるようになって。特にお気に入りのコーヒーレディがいるわけでもなさそうだったから、自分の顧客にするチャンスだと思って積極的に声を掛けてたの」

「まぁ、買ってくれる可能性が高いお客さんが自分のことを気に入ってくれたら、売り上げも上がりますもんね」

E「そうそう。でもそのお客さん、私が自分のこと好きだって勘違いしちゃったみたいで。そのうちコーヒーを渡す時や料金を受けとる時にわざと手を触ってくるようになって…」

「わー。それは嫌ですね」

E「うん。まぁ少しくらいなら良いんだけど、そのお客さんはネットリしたハードな感じの触り方をする人でさ」

編集X(以下、X)「ネットリしたハードな感じって、何かイヤラシイな」

「確かに。でも、なんとなくわかります! そういう人って、黙ってるとどんどんエスカレートしません?」

E「そうなの! でもコーヒーは沢山買ってくれるし、まだ手を触ってくる程度だから良いかなと思ってて」

「えー! E華さん、心が広いんですね」

E「そう? まぁ減るもんじゃないし。それに、そのお客さん少しイケメンだったのよ。超タイプってワケじゃないけど、拒絶するほど嫌ってワケでもなかったからさ」

X「ほほう(E華の手をそっと触る)」

E「!!? (Xの手を払いながら)ちょっとX! なにやってんのよ(激怒)!」

X「えぇ!? 減るもんじゃないから良いって言ったじゃん! 少しイケメンだったら良いって言ったじゃん!」

「Xさん…意味不明です」

E「ほんと意味不明。減るもんじゃないとは言ったけど、触っていいとは言ってないからね。それにX、あなた少しもイケメンじゃないからね」

X「グサ…」

「Xさんがモテない理由、だんだんわかってきました」

X「グサグサ…」

E「今のXの行動もそうだけど、そういう意味不明な勘違いする男って本当に多いわよね。そのストーカー男も、まさしくそんな感じだったの!」

「なるほど」

E「でね、そのお客さん…ある日、私が出勤しようと駅に向かったら私の家の最寄駅にいたの! でも、私の家がどこなのかを知ってるハズないじゃない? だから最初は、家が近所なのかな〜くらいに思ってたの。向こうは私に気付いてないみたいだったし。だけど、それから最寄駅で遭遇することが多くなってね。で、ある時にその人と目が合っちゃって。反射的に会釈しちゃったの」

「まぁ、ホールの常連さんなら顔見知りですし、目が合えば会釈くらいはしますよね」

E「そうそう。そうしたら、ホールでもそれをネタに話しかけてくるようになっちゃってさ。『家は、あの駅から近いんですか?』みたいな感じで」

「普通の常連さんなら何とも思わないけど、手をネットリ触ってくる常連さんだから若干気持ち悪いですね」

E「そうなのよ。で、『最寄駅が同じだから今度ゴハン行きましょう』って連絡先渡されたの」

「ふむふむ。まぁ、そこはシカトですよね」

E「そう。さすがに手を触ってくる件もあるし、ゴハンも行く気はないからシカトしてたんだけど…」

「まさか『なんで連絡くれないんですか?』とか聞いてきたんですか?」

E「そうなのー!! 普通、シカトされたら脈ナシだと思って諦めると思うんだけど、逆に詰め寄ってくるタイプの人だったのよ」

「うわ〜めんどくさい。そこは空気を読んで諦めてほしいですね(笑)」

E「ホントそれよ! だから『お客さんとプライベートで会うのは禁止なんです〜』ってやんわりと断ったんだけど、今度は最寄駅で遭遇するたびに話し掛けてくるようになってね」

「最悪ですね。しかも最寄駅が同じなのが余計めんどくさい…」

E「そうなの。まぁ最寄駅が同じなのは仕方ないことだけど、仕事中以外で話し掛けられるのはさすがに迷惑だからさ。同じコーヒーレディの友達に相談してみたの」

「ふむふむ」

E「そしたら、その娘もそのお客さんに同じことされてたの!」

「え? 同じこと?」

E「そう。最寄駅で目が合って会釈したことを理由に話し掛けられて、ゴハンに誘われて、シカトしてたら『なんで?』って詰め寄られて、そのうち最寄駅でも話し掛けられるようになって…」

「え? え? え? その方もE華さんと同じ最寄駅なんですか?」

E「それが違うのよ! 彼女の最寄駅はホールを挟んで私の最寄駅と真逆なの」

「え!? どういうことですか?」

X「そのお客さんはE華の近所に住んでるワケじゃなくて、最寄駅を調べてE華のことを待ち伏せしてたんだよ。で、E華にはあたかも近所に住んでる感じを装って話し掛けてたってこと」

「えー!? それガチのストーカーじゃないですか!」

X「そうだよ。E華だけじゃなく、彼女の友達の最寄駅も調べて、待ち伏せしてたんだ」

「こわすぎる…。でも、どうやって最寄駅を調べたんですか?」

E「後々わかった話なんだけど、私達の勤務が終わるのを待ち伏せて、こっそり後ろから付いてきてたらしいの」

「うわ、最低…。それ犯罪じゃないんですか?」

E「一応付いてきてたのは最寄駅までで、家までは特定しなかったみたいだから。何か大きな被害を受けたわけでもないし。でも、とりあえずホールの社員さんに相談してみたの」

「ふむふむ」

E「で、大事になる前に一喝して出禁にしようってことになって。ちょうどそのお客さんが来店したから、社員さんが一喝して出禁にしたの。それからはホールに当然来なくなったし、最寄駅にも現れることもなくなって。一件落着って感じかな」

「なるほどー。やることはハードなのに、諦めるのは早いんですね。とりあえずゴハンに誘うキッカケ作りで最寄駅を特定して待ち伏せしてた感じなんですか?」

E「そうみたい。しかも、事件が解決してからわかった話なんだけど、うちのホールで働くコーヒーレディはほぼ全員そのお客さんと最寄駅で遭遇してたの! 全員の最寄駅を特定してストーカーしてたみたい」

「なにそれ。数打てば当たるとでも思ってるんですかね」

E「そうよ! バカにしすぎよね。まぁ誰でも良い分、諦めるのも早かったから助かったけど」

「そうですね。そういう人が、自分にだけアタックしてきたら怖すぎますもんね」

E「そうね。その事件を機に、ウチのホールではコーヒーカップに『ありがとうございます♥』とか『頑張ってください♥』とかメッセージを書くことがNGになったのよ」

「あ〜、メッセージ入りのコーヒーカップはありますね。でも、なんで禁止になったんですか?」

E「そのストーカーが社員さんに一喝されたときに『コーヒーレディがコーヒーカップにハートマークのついたメッセージを書いてきたから、自分に好意があるんだと思った』って言ったらしいの」

「え! ハートマークのついたメッセージだけで勘違いしたんですか?」

E「そうなの。確かに、コーヒーカップにハートマーク付きのメッセージを書くと勘違いして顧客になってくれる人って意外といるのよ。実際は暇な時に大量のカップにメッセージを書き溜めてるだけなんだけどね」

X「なに!? そうだったのか…。てっきり自分のためだけにメッセージを書いてくれてるものだと思っていたよ」

E「ね。こういうXみたいな勘違いをするお客さんを顧客にするために、そういった色恋営業的な事もやってたのよ」

「なるほど。で、勘違いがエスカレートしたお客さんがストーカーになってしまったと」

E「そうそう。だから、メッセージを書くことがNGになっちゃって。おかげで勘違いして顧客になってくれる人がガクっと減っちゃってさぁ。最近、売り上げが上がらなくて困ってるのよね」

X「おいおい、E華。売り上げを上げることも大事だけど、あんまり無茶するなよ。今回はその程度で済んだけど、世の中にはもっとヤバイ奴がいるかもだから。気をつけないと」

E「あらX、たまには男前なこと言うじゃない?」

X「たまにはって何だよ(笑)。E華も窪田さんも"一応"女性なんだから気をつけるんだぞ」

E「は? 一応!? 折角ちょっと見直したのに、やっぱりXはXね。だから浮気女に騙されたり、いつまでたっても彼女ができないのよ!」

「そうだそうだー!」

X「うぅ…。また2人してキズをえぐりやがって…。うぅ…(泣)」


といった感じで、E華さんへのインタビューは終了しました。お客さんと程よい距離感で接するって難しいんですね。私も"一応"女性なので、色々と気をつけたいと思います(笑)。

ではまた来週! 次回もお楽しみに♪
アツいぜ
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