試練は続くよどこまでも
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※2015年3月29日公開分です。


いよいよ来週にゴッド凱旋の導入を控え、その準備に忙殺されているアタマキタです。今週からしばらく質問コーナーは少しの間お休みさせて頂き、また過去の話をしていきたい。ただし引き続き質問の方は募集しているしタイミングを見計らって回答していくつもりなのでドシドシ送ってもらえればと。

さて、このコラムでは入社前のパチプロ時代、そして入社してから店長になるまでの話は既に書いたので、今度は店長になった後のことがテーマだ。実は例の会社で店長になったは良いものの、わずか2年ほどで退職する羽目になったのだ。

なんでそんなことになったのか?

どんな組織でも大なり小なり問題はあるだろうし、そもそも完璧な組織なんていうものはないのだからトラブルはつきもの。下っ端には下っ端の苦悩があるし、上役には上役にしか見えない辛苦や争いが突如として勃発するものである。異動の辞令を受けた時には想像もしなかった試練が次々と降りかかってくるわけだが、ここからしばらくはそのあたりを思い出しつつ書いていくつもりだ。壮絶な諍いと変態オーナーとの全面戦争について…。



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副店長として新しい店舗に配属された俺だが、女社長から特別な任務を命ぜられていた。それは、「異動先の店長に問題があるから、その尻尾を掴んでクビに追い込んで欲しい」というもの。今考えても、副店長になりたての人間によくもそんなことが言えるなぁと呆れるような特命であった。

とはいえ、現実問題としてまずどこから手をつければ良いのか皆目見当がつかなかい。しかしながらやるべき事は自分の仕事であり、まずはそれを確立させることが肝心であると思い定めた。

しかし転勤初日で急転直下。挨拶のために事務所に入るなり、例の店長から衝撃的な歓迎を受けるに至ったわけだ。

「俺たちもう辞めるから、今日一日で仕事覚えてな」

と言い残し、店長一派と言われていたその店の主任2人と班長1人、さらにカウンターの女性スタッフまでもがその日で退職していった。何なんだコイツらは? アホなのか?


まぁこれが嫌がらせだとするならば大成功だろう。あとに残された側のしんどさたるや半端ではなかった。これはもうテロにあったとしか言いようがないほどの理不尽さである。

当然だがこれでは仕事にならないためすぐにオーナーに相談したのだが、人を回す余裕がないということですべて自分がやるハメに…。これはとてつもない試練だった。

まず、主任や班長がいないということは両替機の鍵を持っている人間が自分以外にいないということを意味する。つまり…四六時中ホールを離れられないことが確定した。営業中の13時間、常にホールにいなければならないのだ。これは、ちょっと前に問題になった"ワンオペ"みたいなものだろう。

そんな過酷な状況であるにも関わらず、その当時はホールスタッフの休憩所などはなかったため、眠くなってもひどく疲れても横になる場所などはない。ゆっくり飯を食うなんて夢のまた夢で、それはカウンターの中に隠れて素早く胃に流し込む作業でしかなかった。もちろん食事のために外に出る余裕などないため、人数調査のために店外に行くスタッフに頼んでマックのハンバーガーを買ってきてもらってそれを食べていた。その後遺症か分からんが、その境遇から這い出た後、マックのハンバーガーは食べようと思わないし見たくもない。

それだけではない。トイレに行くのも気が引けてしまう。汚い話で恐縮だが、もし大をしている間に両替機が詰まったらお客を待たせてしまうからだ。それは自分にとって大きな恐怖だった。


そんな恐怖と苦痛と屈辱と疲労を日々蓄積させながら毎日の仕事に明け暮れていた。営業中の業務は13時間ぶっ続け、さらにその前後には開店前と閉店後の業務だってあるのだ。朝の8時から夜中の3時までずっと仕事に拘束され続けて、気付けば俺は3カ月ほどそこで暮らしていた。その間、家には一切戻っていない。

そんな俺を見かねたのだろう、ようやく女社長から助け舟が入る。チェーン店から主任を一人連れてくるということだった。まぁ誰が手伝いに来てくれるのかは分からないが、それが誰であれ仕事が増すことはないし、これで多少は楽になるだろうと心底救われる思いだった。


待望の日、事務所で待っていると、社長とともに現れたのは、俺より年齢が2回りは上であろう酒焼けしたオッサンだった。

見てくれはずんぐりむっくりとした体形で、眼鏡だかサングラスだかいまいち分からんものをかけていて、どう見ても善良なる一般市民には見えない。生理的に苦手なイメージを持たれやすいタイプとでも言おうか、まぁ…これは個人的な感覚で申し訳ないのだが、正直言って、身の毛のよだつ思いがした。

のちに紹介されたその男が佐藤という名前で、前のホールでの役職は主任であった。この会社に入社してから10年を越えるベテランなのだが、以前この店で働いていてこの店の実状に詳しいからという理由で指名されたようだった。

佐藤は女社長から紹介されると、

「副店長様の教えを大切にし、ともに店を盛り上げていきたいと思いますのでよろしくお願いします!」

と、下心のありそうな笑顔を作りながら手を差し出してきた。俺は気持ち悪いなぁ~と思いつつ(笑)も大人の対応で握手をしたわけだが、どうも力の入れ方が必要以上、つまり過剰であり尋常でない。

「なるほどね。そういうつもりなのね…」

瞬時にそう感じたがひとまずここはやりすごし、オーナーを見送った後で主任と話をすることにした。

「アタマキタと言います。佐藤主任は以前こちらで働いていたと聞きました。自分もまだまだ分からないことがたくさんあります。協力し合ってよい店を作りましょう」

そう言って目の前に座っている佐藤主任を見やると、何やら眉間にしわを寄せてこちらを睨んでいる。何かまずい事でも言ったか? と思ったが、親切にもヤツは俺にその答えを包み隠さず教えてくれた。

「お前! 副店長だか何だか知らねぇけどよ、勘違いすんなよ。この会社では俺はお前の先輩で、この店だって俺の方が詳しいんだよ!」

そう言い捨てて事務所のドアをもの凄い音を鳴らして閉めて行ってしまった。さすがにこれには呆気にとられたが、見事に嫌な予感は的中したわけだ。


これからどうしたものかと思い、とりあえず俺は佐藤が以前に勤務していたという店舗の主任に連絡を取ってみた。するととんでもない話ばかりである…。

ずいぶん前のことにはなるが、今でこそ主任の佐藤だが、もともとはこの店の店長だった。しかし半年ほどで主任に降格させられたそうだ。

なぜかといえばその当時、ヤツが店長になってから売上金が足りないという問題が起こった。それでも初めは様子を見ていたようだが、そんなことが一カ月に何度か起こるようになり、半年間で不明金は300万円以上に膨れ上がった。

さすがにこれは問題になり何度も会社から問い詰められたのだが、ヤツは知らぬ存ぜぬの一点張り。それどころか部下の主任達に「お前が盗んだんだろう!」と凄み、片っ端から部下に暴力をふるっていったとのことだった。どんどん人が辞めていくという事態になり、見るに見兼ねた社長が管理不行き届きという体裁で、別の店舗に主任として赴任させた。

その後は他のチェーン店でお荷物のような扱いをされていたらしい。それでもおべんちゃらは大の得意らしく、今回は社長に自分から志願してこの店に来たというのだ。しかも面倒なことに、以前俺が追い込んだマネージャーとは大の仲良しで、「今でも連絡を取り合っているらしいから気をつけろよ」と忠告を受けたのだった。

さぁこれからどうして行けば良いのか…。それにしても、俺はどうしてこんな面倒なことに巻き込まれてしまうのだろう?
(つづく)