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- 【THE BEST】なんか聞きたいことある?
南国
※2016年6月12日公開分です。
今回は結果的にスロットの話になってしまうのだが、スロットかパチンコかというのはあまり関係のないテーマなので、スロットを打たない人も読んでもらいたい。それでは早速行ってみようか。
【本物語さんの質問】
お店から見て、専業の存在ってどうなんですか? 出したい時に出玉感を演出してくれるからありがたい存在? それとも、良い調整にするとタコ粘りされて一般客にそれを体験してもらえなくなるから、迷惑客?
ちなみに、朝の並びの顔ぶれを見て急遽釘や設定を変更することってあるんですか?
【回答】
プロに対する認識は店によって違うのはもちろんだが、規模(人数)やタイプが重要になると思う。少なければ気にならないだろうし、逆に多すぎるっていう場合でも、勝手にホールを盛り上げてくれるかもしれない。ただ、ことこどく良台を押さえられてしまうような体制で攻められたとしたら…まぁ放ってはおけないよな。
とまぁ対応は店や状況で全然違ってくるわけだが、最近の店長たちは彼らの扱いが甘すぎるんじゃないか? と感じる場面は多いよ。プロ連中の扱いに慣れてないせいなのかな? 今は昔と比べるとトラブルも減ったからな~。
ちなみに、俺は自分がパチンコ生活者だった時代があるので、彼等の思考パターンは手に取るように分かる。そのせいか、同属嫌悪っていうのかな…要するに、俺はプロが嫌いなんだよね。特に、ロクに「勝つための努力」もしないで口ばっかり達者なプロ気取りの連中はヘドが出るほど嫌いだ。
昔の話になるが、ある日の出来事の話をしてみたい。
一時期、俺は店のキメ日(常連からイベント日と認知されており、店側もきっちりと玉を出していく日)には、スロット各機種に必ず設定6を1~3台ほどブッ込んでいた。その内容に関して告知はしていなかったのだが、お客様は暗黙の了解といった感じで、その日を楽しみにしてくれてたよ。そして常連客が設定6をツモりやすいようにと、俺の方も煽らずに営業していたわけだ。
ただし、一応答え合わせはしたいだろうから、夜9時になったら該当台に設定6の札を差していった。もし遊技中のお客様が希望すれば、設定キーをひねってその場で設定も確認してもらっていたよ。今からは信じられないだろうが、昔から打っている人であればこれが普通の光景だったことは分かってもらえるだろう。
しかしながら噂は広まるもので、お客様の認知が進むにつれ、キメ日の並びはどんどんどんどんキツくなっていき、飛び込み(開店)で満台になってしまうことも多くなった。
このお客さんがほとんど常連というなら問題ないのだが、ここまでになると、鼻の利くプロ連中がどこからともなくやってくるわけだ。もちろん、その後も遊びに来てくれるならまだしも、こういう連中はキメ日にしか来ないのだから、店からしたら良い気がしないのは当然。そもそも常連のサービス台が減るわけだし。
というのが、前置き。
さて、当時、自店舗には4号機の『南国育ち』という機械を5台設置しており、キメ日にはこの南国育ちにも2~3台ほど設定6を入れていた。
この機械を知っている読者はご存知だろうが、南国育ちの設定6は非常に看破しやすく、出玉率も高い。すると、プロ連中としては当然の流れということになるのだろうが、ここに目を付けられてしまったわけだ。
ある日のイベント開催日の夕方。店から離れていた俺は、店内の客付きが気になったため、会社に電話して様子を聞いてみた。すると、5台ある南国育ちの、そのうちの3台全ての設定6が、見たことのない連中に出されているとのことだった。見たことがない奴らで、かつ態度がデカく、つるんでいる様子が見て取れたことから、恐らくプロ集団だろうと察しはついた。
閉店後に店に戻ってデータを確認すると、このプロ連中にタコ粘りされたせいでかなりの枚数を持っていかれてしまった。これを見た俺は、直感的にこいつらは翌月も来るだろうと悟る。そして、主任がモニター画像から写真に落とし込んだ3人の顔を凝視し、それらをしっかりと脳裏に焼き付けていた。
翌月、またキメ日を迎える。そして事件は早朝に起こったのである。
前日の設定やら何やらで朝方まで働いてヘトヘトだったが、俺は仕事を終えても家には戻らず、事務所でモニターから外の様子を窺うことにした。
すると、前日からの徹夜組の先頭集団に、脳裏に焼き付けられた忌々しい姿を確認してしまう。しかも例の3人の他に、もう2人仲間を加えているようだった。
「ふふ、なるほどな。南国育ちの台数とぴったりの5人組ってわけかよ…」
戦略としては的を射ているのがまた癪に触るじゃないか。しかも、記憶との照合を確実にしようとカメラをズームすると、正面入口前に雀卓をこしらえ、麻雀を打っているのが目に入る。これは他の客にとっても迷惑に違いない。俺はすぐに主任を呼び出し、これを止めさせるよう話をつけて来るように伝えた。
しばらくして主任が戻ると、一見して分かるほどに困惑の様相を呈している。どうやら、麻雀を止めるように話をしたところ、5人組に一斉に煽られ、もともと気の優しい主任はタジタジになり、最終的に引っ込まざるを得なくなってしまったようだ。
この主任はまだ着任したばかりで、イベント当日はやることも多くテンパっている様子もあった。正直、内心では苛立ちを覚えていたのだが、こういうことは初めてのことだし対処できなくても仕方ないのかもしれない。
そう思い直し、奴らに何と言われたのか聞いてみると、「開店前に何してたって俺らの勝手だろ! そんな法律あんのかよこの野郎!」という、俺からすれば初歩中の初歩、想定範囲ど真ん中の反応ではないか。その程度でおめおめと…とは思ったが、ひとまず自分で引き取ることにした。
正面入口に向かうと、そこら中にカップ麺やポテチの袋ゴミを散らかし、バカ笑いをしながら麻雀を打っている奴らの姿が目に飛び込んできた。良く見れば、成人したばかりとしか思えないガキ連中の集まりだ。
地べたに座って麻雀を打っている奴らの真横で俺はうんこ座りをキメ、話しかけた。前述したように、俺は『客』ではないプロには厳しい。この時点で、こいつらを客とは思っていない。俺は睨みを利かせつつ静かに、
「お前らさ、さっき主任に注意されただろ? 麻雀とっととやめろや」
と諭した。
すると、4人はすぐに目を逸らしたが、ボスらしき人物は俺を睨みつけて突っかかってくる。ここからは、こいつのことを白ブタと書かせてもらうが、読んで字のごとく色白のブタ野郎である。
「開店前に俺らが何をやったって関係ねえだろ! そんなルールがどこにあんだよ!」
主任と同じ反応に対して、俺はすかさず切り返した。
「おい、てめえ! よく聞けよ? 麻雀やりてぇなら雀荘に行けってんだよ! 開店前なら何やっても構わねぇってか? ふっ、笑わせんな…店の敷地内で勝手が許されるわけねえだろが!」
もちろん、問題さえ起こらなければ敷地内とはいえ多少のことは目を瞑っている。しかしこちらがダメだといっているのにそれを拒んで良いという法はないだろう。ま、自店の「客」であれば当然対応は異なってくるのだが。
「いいか、今から5分以内に雀卓を片付けろ。散らかしたゴミも全部始末しろよな。もしそれができないってなら、お前らを絶対に店に入れさせねぇからな!」
この言葉に反応し、白ブタ以外の4人はすぐに立ち上がって片付けを始めた。白ブタだけはしぶとく抵抗の構えだが、言葉を失ったかのように俺の顔を睨み付けている。
しばらく緊張が続いたが、遂に白ブタが口を開いた。「俺は納得しねぇからな。そんなルールがあんだったら最初から言えや!」と凄みながら顎を突き出して俺に近づいてきたのである。
(こんのクッソガキ…アッタマキタ!!!)
白ブタ野郎は息がかかるところまでにじり寄ってきたが、残念ながら、俺はこの程度でビビるほどヌルい世界では育っていないのだ。
「お前さ、さっきから聞いてればルールルールって、小学生かよ? あのなぁ、この店は俺が責任を持って管理してんだぜ。ルールは俺自身なんだよ。あんまり舐めた真似してると、この店どころか東京中のホールで打てなくなるぞ?」
白ブタとの睨み合いはその後もしばらく続いたが、遂には奴は目線を外し、列の先頭に戻っていった。しかしおめおめと引き下がるのはプライドが許さなかったのか、戻りしな俺に背を向けながら、「あ~あ。店の偉い人に怒られちゃったよ~」と、精一杯おどけてみせている。これには俺もイラッとしたが、目的自体は果たしたので、事務所に戻ることにした。
それからはモニター越しに見る限りは落ち着いている様子である。そして遂に開店の時間を迎えた。
案の定、例の5人組は南国育ちのコーナーへ突進していく。
「あいつら…やっぱりか!」
モニターでその姿が目に入ったが、こうなってからでは手出しのしようもない。いくら自分がルールだと凄んでみても、「南国の設定6はお前らには打たせない!」なんて道理は通じないのである。
ひとしきり様子を窺った後、俺は近くの喫茶店へと向かった。モーニングのトーストを頼み、コーヒーを啜りながら、読みかけの漫画を読む。なんたる至福だろうか!! 5人組との揉め事も忘れ、束の間の休息を堪能していた。
11時を過ぎた頃だろうか。心なしか風雲急を告げるような音色が携帯を通して鳴り響いている。数回のコールを見送ったのち対応すると、声の主は心の優しい主任だった。随分と慌てた様子である。
「朝方、表で揉めていたプロ連中の一人が、もの凄い剣幕で店長を出せと騒いでいます! ど、どうしたらよろしいですか?」
やれやれ…。どうやらあの白デブはまた俺にやっつけられたいようだ。
主任は、すぐに戻ってきてほしいと切々と訴えてきたが、俺は「漫画を読んでいる途中だからちょっと待たせとけ」と突き放した。しかし電話口からあまりに情けない声が漏れ聞こえたので、俺は仕方なく漫画を読むのを止め、食べ残しのトーストを口にくわえて喫茶店を後にした。
戦闘モードに頭を切り替え、急いで店へと戻る。
(つづく)