3月7日の稼働日記
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わしが小学校を卒業したのは平成元年(昭和63年度)なのだが、その世代はおそらく高校まで土曜日も学校に通っていたと思う。そのため、土曜日といえば「半ドン」、つまり午前中だけこなして解散というイメージから抜け出せない。

さらにその先の学生生活でも土曜日にはゼミや自主研究で通学していたのだか、やはりこちらも半ドンであった。

その後まもなく世間では週休二日制が定着していくわけだが、そんな頃にはわしはもうパチプロに転落しており、状況の良さも手伝って土曜日もせっせと稼働にいそしんでいた。つまりわしの人生においては、土曜日は休日であるという習慣と無縁であった。

しかし現在ではパチプロからも身を落とした「場末のパチンコ打ち」として世間の外界に存在する無残な哀れ者に成り果てているわけで、完全に世間の縛りから解放されている。そうなると、土曜日どころか全ての曜日において休みたい日を日曜日にできるわけだ。


正直な話、呼吸をすることすらダルいと思うこともあり毎日を日曜日にしたいところではあるのだが、それでは既に破綻しかけている人生が確実に破滅の境界へ踏み出すことになるので困っている。このザマでは今年の一字は「破」になってしまいそうだ。そんなものはエヴァだけにして欲しいものである。

なんでこんな話題を出したのかというと、これから話題にする日がたまたま土曜日であったというだけのことなのだが…。


この日、普段の稼働日同様の起床時間となったが、起きてはみたもののマイホールに特段のアテはなかった。もちろんそんな状態ではモチベーションなど上がるはずもなく、そのままズルズルと休みにしてもよかったのだが、少なくとも稼働絶好調の「大海3」だけは遊べる調整になっているだろうという判断で出かけることにした。

ただしその程度のことなので、当然こちらも遊べる範囲の稼働、つまり「貯玉(再プレイ無料)の範囲で持ち玉を獲得する」、または「貯玉プラス低投資で持ち玉遊技に持ち込む」という縛りは生じてしまうことになる。

そこで様々な考えを巡らせた結果、貯玉を使い切ってランチでも食べようかというところに落ち着いたため、時間を逆算して11時過ぎにホール到着という極めて現実的なプランを立てた。実戦結果は天佑だということで考慮に入れていない。

ちなみに、マイホールは地域の中心部にあり、わしの生活エリアの拠点というべき場所にある。そのためランチの選択肢が多いため、それもホールへ繰り出した理由だったりもする。



話は飛ぶが、大海3の空き台で打ち始め、すでに貯玉は尽きかけている。その時、シマを覗きこむ「栄一」を発見した。

この栄一を軽く紹介すると、かつて聞いてもいないのに1940年生まれと言っていたから、御年75歳ということになるのだろう。晴れて今回で3回目の降臨となる、ダジャレ好きな愛すべきオッサン、というかジジイである。

この栄一、平日はだいたいパチンコで負けては自棄酒を煽り、そのうえ土日は競馬三昧である。もちろんそこから分かるように(年齢的に考えれば当然だが)、このオッサンも毎日が日曜日だ。おあつらえむきにもこのエリアには場外馬券場とパチンコ屋があるため生活の拠点になっているのだろう。そんな栄一にとってわしは「同じ穴のムジナ」らしい。

ちなみにこの栄一、「溶接工でもしてたのか?」と思われるほどに見事な体躯である。この日も75歳には見えない風貌の同じ穴の同朋をチラ見していたところ、「ビビビー」とわしの台がノーマル2段階で大当たりした。突然の爆音に不意を突かれたが、慌てて液晶を確認すると、喜ぶべきことにカメ図柄の確変大当たりであった。

そんな"ウホッ"と思えてくる大当たりを消化していると、さもしく栄一が近づいてきて「上手いな」と耳元に口を寄せて囁いてきた。

わしは「アンタのことを考えてたら当たったんだよ」と反射的に思ったが、そんなことは口が裂けても言えない。なんとなく栄一に借りを作るようだし、もしそう思われたとしたらそれは屈辱以外何ものでもない。

どうせ栄一は派手に大当たりした台を見つけて、そこにいたのがわしだったため何かしらの小言を言いに来たに決まっていた。


「上手いな」という年寄りの冷や水を浴びせられたところで、わしに言わせれば台が勝手にしたことでしかないのだが、ノリに任せて適当に「そうやろ、上手いやろ」と言ってやった。

それを聞いた栄一は予想していた返答と違ったのか、一瞬考える間があり「おお、そうだな。上手いな。ハハハ」と謎めいた笑いで誤魔化していた。

パチンコのことで話していても栄一から有益な情報をもらえる見込みはないので、「それよりさぁ、今日は競馬でしょ?」と振ってみた。すると、「おお、今から行くんだよ。だけど今日は当たる気がしねーよ」と思いのほか弱気であったため、「酒でも呑めば気分が変わるんじゃねえか」と発破をかけてやった。すると栄一は、「ハハハ。そんな馬鹿な」と苦笑いしながら去っていったが、その後ろ姿は図星だと言っているような気がした。


さて、この初当たりを消化した時点でランチタイムである。当初の目論見通り正午少し前に馴染みの惣菜屋へ向かい、380円の唐揚げ弁当に240円の肉豆腐の惣菜を付けた普段より豪華なランチに舌鼓を打つことができた。

余談ながら、ランチタイムは「早食い」が鉄則である。元パチプロの名残として、もし優秀台をせしめている場合であれば、早い&美味い&安いという三拍子揃った牛丼ですらも作っている時間(待ち時間)が惜しくなる。だから思い通りに時間を使える作り置きの弁当がわし好みのランチなのだ。

ただし、時間がずれると冷えた弁当を食べるハメになるから、ランチタイムのタイミングが稼働時の注意事項筆頭だったりする。もちろん、超優秀台に当たればメシ抜き稼働を余儀なくされるのだが…。



それはともかく、張り切って残りの確変を消化するも速攻でサメ図柄(単発)を引き当ててしまい1セットで終了した。その後、獲得した持ち玉全部と残っていた貯玉を追加したが、ついに次の大当たりは獲得できず帰途に就いた。

さしあたって確変大当たりで当初のプラン通りに事が進むかに思えたが、結局「半ドン」で帰るハメに。まぁこの日は時間の逆算に成功して温かい弁当でランチできたこと、栄一の小言(上手いな)が聞けたという意味では有意義な土曜日だったのかもしれない。



追記
朝日山親方の物言いの一番での場内説明が大好きだったが、今場所限りで停年ということもあり審判長職を離れられた。あの名調子が聞けなくなったのは大変残念だが、今後はゆっくりと余生を過ごしていただきたい。個人的には、この親方のアナウンスを聞くことに、横綱・鶴竜が金星を配給すること以上の価値を認めるほどであったのだが。

さて、その後任には元大関・武双山の藤島親方が就任した。過去の幕下以下の取組で審判長としての場内説明を聞いている限り、そつなくこなしているという印象だ。藤島親方も場内説明を担当するにあたり何かしらの個性を発揮してほしい。


ちなみに、親方衆の花型は審判員で、その最たるものが審判長が執り行なう場内説明だと思うのだが、貴乃花親方にとってはそんなことなど関係ないらしい。

貴乃花親方は、「同体なのでは?」と思える際どい一番でも協議の結果しか言わない。例えば、「只今の協議について説明致します。行司軍配は◯◯の上手投げを有利と見て◯◯に挙がりましたが、同体ではないかと物言いが付き協議した結果、△△の足が先に出ており、行司軍配通り◯◯の勝ちと決定しました」(朝日山親方の口上)と丁寧に説明したほうが威厳も貫禄も感じられる。

しかし貴乃花親方は「行司軍配通り◯◯の勝ちとします」と結果だけしか言わないのだ。このインパクトは何気に強烈だし、これはこれで貴乃花親方の個性だとも言えるのだが、やはり朝日山親方の丁寧な説明に加えて独特の名調子が忘れられない。