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- 打チ人知ラズ。(わし)
Call and response 4
少し前の話になるが、パチプロを続けていることの惨めさやジレンマを書いたコラムに対して回答したいコメントが届いたので紹介したい。
僕はパチプロが大嫌いです。そもそもパチンコのプロって(笑)。
正直、パチンコで生計を立てて生活して行くことがどれほど大変か、そして辛くて惨めなことなのかについてこれからも書いて欲しいです。
そして仕事もしないでパチンコ生活に憧れている若者に現実をしっかり知ってもらえると嬉しいです。
(PN:キビツ)
…という内容だった。
まずは、キビツさんはじめ読者の皆様に対して、「こんなコラムを読んでいただいてありがとうございます」と感謝申し上げます。惨めなわしの愚痴とも言えるようなコラムにおつきあいいただいているだけでもありがたいことである。
さて、まずパチプロ嫌いについてだか、大が付くほど嫌うのには理由がありそうですが…何かあったんでしょうか。まぁ毛嫌いされても仕方ないかもしれません。わしですらどうかと思うパチプロもいますからね。
わしのマイホールには、ハマリ台とピンで活動しているプロの台を奪い取ることを専門に立ち回っているジイさんがいます。このジイさんは、上手そうな打ち手が打っている台の釘を、打ち手がトイレ休憩等で席を外したスキに舐め回すように隅々までチェックします。また一般客が1000回超えのハマリを喰らった台を、定期的にホールを巡回して下調べをしています。
そして翌日は朝イチで整理券を取り、狙った台を容赦なく奪い取ります。ヒドい時には、仲間を連れてきて、そいつらに我が物顔で奪い取った台を打たせています。
こんなジイさんですから、仲間以外のホールの客全員から総スカンを喰らっています。この手の立ち回りは「マーク屋」と呼ばれ、それなりに良識のあるプロは誰もやりません。ですから、わしもジイさんが大嫌いです。時々台を奪われている知り合いのプロも「老い先短いジイさんだから…」と見て見ぬフリをしていますが、実際はジイさんを嫌いまくっています。
また、パチプロがいかに惨めな生態かという部分につきましては、今後も読者様にお知らせできるよう努力致します。そして最後の部分、わしはパチプロに憧れている若者は知りませんが、ある若者の「パチプロへの入り口」をお話したいと思います。
彼は高校時代にある精神疾患にかかってしまい、それ系の薬の常用が欠かせない状態になりました。まぁなんと言いますか、人と関わり合うことが困難になってしまいます。最終学歴などは聞いていませんが、フルタイムでの勤務が難しいために正社員としての就職は難しかったようで、一人で気楽に作業ができるということで、深夜のビルのメンテナンスをするアルバイターになりました。
ただし、一人で作業する環境がよほど水に合ったのか、病を抱えながらも特段のトラブルもなくコツコツと仕事をこなしていきます。そして実家暮らしということもあって貯金も増え、自由になるお金ができました。そこで彼はアルバイトをこなしつつパチプロとなったのです。
なぜ上手くいっているのにパチプロなどになるのか…と思われるかもしれませんが、人付き合いが苦手な人間にとって、パチンコというのは非常に相性が良いかったんでしょう。彼が煩わしいと感じている人間関係は皆無だし、一人で作業するという意味で自己完結が可能です。しかも彼はキチンとパチンコの勝ち方を理解していましたから、短期間のうちにバイトで稼ぎ出す賃金を上回る収支を上げていったそうです。
わしと出会ったのはそんな時です。ちなみに彼は人付き合いが苦手なだけで、対人恐怖とかいうものではありません。ただ、スムーズに人付き合いをすることが難しいという感じでしょうか。いずれせよ、なぜか彼はわしと話すようになりました。そして色々と会話を重ねていくうちに、わしも何となく違和感を覚えていくわけです。彼の側の事情を知らずに話していたわけですから仕方ないでしょう。
自慢話や自己アピールする内容が多いのはまだしも、わしと話していながら、わしの存在が丸っきり見えていないわけです。例えば「先月は80万勝ちました」など、前後の話の流れはそっちのけでいきなり自慢話が飛び込んできます。
言うまでもありませんが、彼の収支などに興味はなく、わしには突然の発言の真意を図りかねてしまいます。今思えば、もしかしたら何かの幻覚が見えていたのかもしれませんが…。とりあえずその時は当たり障りのない適当な生返事で話を流しておきました。真意不明な発言にはまともに答えることができないですからね。
とまぁ病ゆえにいろいろと難しい面もある彼ですが、一方でとても素直な人間でもあります。兄貴でも師匠でもないわしに上記のような実状を切々と語るのです(わしの事が見えているかは不明ですが)。わしも若者に勘違いしてほしくない、可能な限り力になってあげたいと思っていますから、わしに語れる範囲でのアドバイスは惜しみませんでした。
ですが、ある日、「パチンコの方が稼げるし、パチンコで食っていく自信も出てきました」と口を開いてきました。わしはこの発言を聞いて非常に悩みました。確かに1ヶ月で80万も勝った月があるし、今はそれなりに安定的に稼げているようだから、自信も湧くのでしょう。でも「その先どないすんねん?」とも思うのです。
とはいえ、この問いにはわし自身も明確な答えを持ち合わせていません。「どうなるかは分からないが、行くところまで行きたいです」という秘めた想いを彼に打ち明けることはできません。若者を不幸にするかもしれない発言を年長者がすべきではないと思っているからです。
結局、彼自身が自分で気が付くように自戒を込めてアドバイスを送るのが精一杯なのです。彼と話をしている限り、頭の回転は早いし学校の勉強は良く出来たんだろうという印象はありますが、「人から学ぶ」的な感覚はあまり響かないのかも知れませんね。彼もマイホールの住人なわけで、わしを含め他の住人たちを見ていれば自分の将来像が漠然と理解できると思うのですが…。
いずれにせよ、そこに自分の道を見つけざるを得なかったという人間もいるんだろうと思います。そして、それが正しいのかどうか、わしに言う資格はありません。