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- 打チ人知ラズ。(わし)
11月11日の稼働日記
この日はスケジュールの都合で15時過ぎから時間が空いていた。十一月場所開催中だから帰宅してテレビ観戦したいところだが、相撲ばかり見ているとパチンコ稼働が疎かになってしまうぞと気合を入れてみた。「ダルいから夕方からパチンコなんか打ちたくない」というのが偽らざる本心ではあるのだが…。
しかしこの日の仕事の流れは、『下見でもしてこい』という神のお告げのような時間配分につき仕方ない、重い気分を引きずってマイホールへと向かった次第だ。しかしもろもろ決着がつき次第、速攻で帰宅して相撲観戦の予定である。
とりあえず貯玉のみを打つつもりだが、望外に回る台に辿り着く可能性もゼロではないから、適当に戦術を立ててみることにした。案外こういった心積もりというのは大事である。芯を決めてブレない指針を固めておけば、場の雰囲気にノマれ、その流れで無益な勝負してしまう…なんてことを避けられる場合もあるからだ。
まずは…夕方から、かつ換金差額のある状況下での実戦となるため、確率分母の回転数を稼ぐだけで現金投資を余儀なくされそうなマックス・ハイミドル・ミドル機は御遠慮願いたい。朝イチの1万円投資と夕方からの1万円投資は同じように思えるかもしれないが、換金ギャップがある場合は全くの別物であると心すべし、というわけだ。
繰り返すが、これは全くの別物と考えた方が良い。なぜなら、現金投資から閉店時間までの持ち玉遊技可能時間を考えると、朝イチの方が圧倒的に打てる時間を長く持っているため、持ち玉1玉の価値が相対的に高くなるからだ。
ちなみに、最近では滅多に見かけなくなったが、現金投資だけで期待値がプラスになる、つまり1回交換ボーダーを超えるような台であれば夕方からの現金投資も"アリ"。そこは全く問題ない。
つまるところ、現金投資の判断はプロとしてのレベルが上がるほどシビアになるものだが、この日は早く帰りたかったから、シンプルに現金投資は避けようと決めた。結果的には最良の立ち回りとなったわけだ。
そこで、まず「バラの儀式」をチェック。貯玉の範囲で大当たりが引っかかるという妥当性が高いものとしてはライトミドルくらいがせいぜいだろう。
しかし釘の様子を見るに、明らかに手ぐすねを引いて待っている。これはどうみても無理だ。残念ではあるが、結果的に愛しの「柏木由紀さん(ゆきりん)」に振られてしまった。次にもう一段リスクを下げて甘デジコーナーも覗いてみたが、満席に近く台を選べる状況ではない。さて、困ったぞ。
帰宅したい衝動と相撲観戦の誘惑は高まる一方であったが、せっかく来たのだしもうちょっと考えてみよう。しかしこの面倒の中でわざわざ打つのであれば、やはり勝つ戦術を模索したい。しかし、夕方から打ち始めても勝てるプランは「持ち玉になりやすい台の甘釘台に座ること」なのだから、すでにそれは上記の理由から破綻している。はて、これは本格的に困ってしまった。
ということでわしは画期的方針転換を図った。前提をマルっと変え(考えるのが面倒だっただけなのだが…)、今後必ず打つ機会が訪れるであろう新台「CRまわるんパチンコ大海物語3」を試し打ちしてみようという極めてユルいプランに変更したのだ。
このような転向がないように、そう、無駄な勝負をしないように、事前に立ち回りを練るという作戦をとったにも関わらず、である。あっさり最善の戦術を捨てるというわしの軽薄さよ…。
ま、それはそれ、か。神のお告げに素直に従い貯玉だけ打って帰ることにしよう。わしは軽い性格なのだ。
余談ながら、この軽い性格こそがパチンコ打ちを長く続けてこられた秘訣だと思っている。わしは長い物には巻かれる主義だし、流れに抗うより従うほうが楽な生き方だというポリシーの持ち主なのだ。オマケに諦めるのも超絶早い。
それはともかく、大海3のシマも台が選べる状況ではないので根拠ナシで台を選んでみた。理由はたった一つ、わしが何かの拍子に「栄一」と勝手に心の中で名づけた顔見知りの初老の男の隣が空いていたということだけだ。
この栄一、普段は頻繁に寒いオヤジギャクを飛ばし周囲を凍りつかせている。まあ、わしも辟易する場面も多く関わりは最少にしているのだが、こんなアテのない時の台選びだから、寒いギャグにも寛容になれるのではないか。
ということでいざ、まわるんと対峙。本日の諸条件ならば、千円あたり25回転がボーダーラインになることを再度確認して打ち始める。完全に初見の台なので詳細は不明だが、回ることをコンセプトにしているだけあって、電チュー性能を含めた見た目の元ゲージは甘めの印象を受けた。
そして打ち出した玉の流れに注意を向けていると、大当たり中の栄一が「あれ、これだけしか出ないの?」と聞いてきた。獲得した出玉の少なさを不審に思っているようだ。
栄一が指差した箱を目にやったが、言われてみれば少々足りないかもしれない。しかし、今回の海は出玉が少なくなっているので、そのあたりを勘違いしているのではないか? そう伝えようとしたところで栄一が打っている台の枠がエラーで光っているのに気づいた。玉詰まりか何だかは分からないが一時的に払い出しが止まっているのだろう。わしはその旨を伝え、玉の流れを吟味するべく打ち出しを再開した。
さて。打ち込み量が少ないから参考程度の話だが、海特有のステージの個体差の見極め、そして、今作は通常時に電チュー開放が多いから下段の道釘の調整も注意が必要だなという感触を得た。また後日にデータランプも参考にして優秀台探しに励もうか、そんなことをぼんやり考えていると、遅ればせながらも出玉を取り切った栄一が、満足げな笑みを浮かべて声をかけてきた。
「寄りはいいな」
ん!? わしは自分の耳を疑った。寄りが良い…だと!? この老人が普段釘読みをしている形跡はないし、玉を詰まらせながら獲得した出玉が特に多いとも思えなかった。それにわしが打った印象では、ゲージが全体的に甘いのだから寄りのおかげだけで出玉が増えるとは思えなかったため、発言の真意を図りかねた。もしかして栄一は、門外不出の秘伝の奥義でも持った凄腕プロかもしれないと微かに思いさえしたのだ。
いやいやいや、それはさすがにないだろう。普段の立ち回りから推測しても、それは絶対にありえない。とその時、栄一が普段沖海を打っていたことを思い出した。そうか…そういうことか。
わしは栄一に顔を向け、「そう! よりはいい」と伝えると、満足そうな顔を返してきた。そして栄一が大声で笑い出したから、つられてわしも大笑いした。なんのことはない。沖海をずっと打ってきた栄一からすればやはり出玉が少ないことに変わりがないのだが、"エラー前"よりは"出玉が"いいというつもりでよりはいいという意味でしかなかったのだ。
同じものに向き合っていたとしても、目線が違うと誤解は生まれるものである。この日、わしはゲージや玉の流れに注意を払っていたため、"寄り"というキーワードに対して敏感になっていたため早とちりしてしまったのだろう。
しかし栄一の発言を単なる冗談と切って捨てることもできない。栄一のように、ほぼ毎日通ってくる常連の目は何気に肥えているものだ。可能性は限りなくゼロに近いだろうが、「この台は他の海と比べて寄りが良いから出玉が多かった」と、栄一お得意のオヤジギャグを混ぜ込んだアドバイスだった…と信じてもよいのかもしれない。ま、わしが打った台は寄りがイマイチだったのだが。
そんなわしの台は、1000玉(4千円分)を打ったところで105回転(千円26.25回)。残念ながら、このボーダー+1回程度の回転率では、残り時間を考慮すると獲得期待値が安すぎて追加の現金投資はできない。ここでようやく撤退の覚悟を固めた。
ちなみに、帰り際にまだ確変中だった栄一に、「では頑張ってください」と声をかけると、「頑張るのは台だよ!!」との大爆笑が返ってきた。
…
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この次元の返しなら悩むまでもないのだが…。
とにかく、本日は約20分の稼働になってしまった。こんなコツコツとした日々の努力が最終的に収支となって結実すれば良いのだから、大海3を試し打ちできた充実した20分間だと言えるだろう。
当初の予定通り、大相撲中継も幕内上位の照ノ富士春雄の取り組みから1時間ほど観戦できたから、この点でも大満足の1日だった。