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- 打チ人知ラズ。(わし)
交換率
「吾輩は猫である。名前はまだ無い。」
言わずと知れた夏目漱石の小説の冒頭の一節だ。これをわしバージョンに書き換えると、
「わしは場末のパチプロである。名前は匿名ですらない。」
と、こうなるが、若干の補足を加えたい。
本コラムはタイトルが"打チ人知ラズ。"であり、名も知れぬパチプロが日々の苦悩を綴っていくコラムである。もちろんパチプロ枠での執筆だろうから、求められているのは「勝つ視点」だったり、時にはホールに集う打ち人やホールの台の扱いを含めたパチンコの深層をお伝えすること、ということだろう。
つまるところ、わしの顔や名前など誰も知りたくないだろから、内容(本文)を最重要視している。また出世魚に例えて、"モジャコ"がブリに出世していく姿をお見せすることが裏テーマだ。ゆえに名前はまだ無いから、暫定的にモジャコとでも呼んでもらっても構わない。
とはいえ、日々のモジャコぶりも楽ではないのだ。2月にマイホールの換金率変更と得意機種のガンダム撤去というダブルパンチに見舞われたことは既に述べた。それから2ケ月ほどが経過し、これがボディーブローのようにジワリと効いてきた。
交換率が33玉から30玉交換へと換金率が上がった。わしは"高回転率台を長時間打つ"というパチプロの王道スタイルを実践しているのだが、換金率アップの意味するところは、高回転率台がリアルに減っていくということなので、これはまさに痛恨となった。実際、マイホールの回転率も右肩下がりで、粘るに値しない渋い台が激増している。もっと言えば、というかはっきり言ってしまえば、もうお手上げ状態なのだ。
しかし会社帰りなどに打つリーマンパチンカーにとって、今回の交換率変更は歓迎すべき事態となっただろう。打つ時間が3時間前後の勝負になる彼らは短時間で結果が出やすい高換金率の方が良いのは言うまでもない。実際、現行機はライトミドルでも2000発を搭載しているから、跳ねた時の見返りが大きく恩恵を受けやすい。
マイホールは駅前店で19時前後が稼働のピークを迎える。最近は朝の稼働がすこぶる悪くなっていたし、4月の消費税増税を見据えて2月に先手を打ったと思われる。そこで、ホールが重視したのが彼らリーマン、ということだろう。彼らはそもそも回転率などそれほど気にしておらず、駅から近かったらそれで良いのだ。
なぜか閉店直前までMAXタイプに鬼の形相で現金投資の全ツッパを試みてくれたりもする彼らは、ホールにとっては朝イチの年金受給者と双璧をなす期待のプレイヤーでもあるのだろう。それにしてもなぜそんなにお金を捨てたがるのだろう? 仕事で嫌なことでもあったのだろうか。
それはさておき、わしはここ数年ジグマスタイルだったから忘れていたが、"同じ期待値なら低換金で打て"という格言を思い出した。例えば、等価交換の回転率20回で期待値3万円、2.5円交換の回転率30回で期待値3万円の同じ期待値の選択となった場合、後者を選択せよとの格言だ。
その意味は、回せる低換金の方が低資金で抽選回数(通常回転数)を稼げるから、より期待値に収束しやすい(安定しやすい)ということだ。パチンコはどんな場合においてもマイナスからのスタートとなる。今なら500円が最小単位で、ここで当たったとしても500円のビハインドをいきなり背負ってしまうゲーム性なのだ。
極端な話、拾った玉1個を打ち出し、それがヘソ入賞し3個の払い戻しを得て、その回転が大当たりして連チャン終了後5万発を獲得したならばその日の投資金はいらない。だが、そんな考えの打ち手はいないだろうし、わしも書きながら初めて思いついた絵空事だ。
そこで、上記の条件で400分の1の機械の確率分母到達までの投資金額を比較してみよう。等価で2万円、2.5円で約1.35万円となるが、この6500円の差をどう考えるかがポイントとなる。
毎回10万円勝とうとするなら、玉の価値が高い等価交換で打つべきだろうが、わしが重視しているの期待値だ。10万円勝てればありがたいことこの上ないのだが、それは運でしかないと分かっているため、そんな夢想などはしない。それよりも、同じ期待値を目指すのに6500円も投資金額を抑えることができるのであればそちらを選ばない手はない、とこうなる。
しかもそれだけではまだ心もとないから、そこからさらに抽選回数の単価を下げようと最大限の努力を尽くしていく。保3止め・オーバー入賞・電サポ止め打ち…などなど、ルールや法を犯さないのであれば工夫は惜しまない。
そして結局のところ、等価交換以外なら持ち玉遊戯の時間こそが期待時給を高める時間帯となるため、すべての思考がそこを目指して逆算され、日々の立ち回りに繋がっていく。
同じ期待値ならば日々の投資金額をなるべく低く抑える、そしてできる限りの技術を投入し平均時給を上げるという戦略が最善だとわしは信じてやってきたわけだ。
正味な話、一物一価が実施された時期に「これからは等価の時代だ。どうせなら早くその環境に慣れた方が良い」と早めに戦術の方向転換を図った者もいた。逆に「等価なら打たない」と頑なに拒んだ者もいた。わしの地域でも高換金率化が進んだわけだが、ちょっと足を伸ばせば選択肢はまだあるため、戦略を変えることなく立ち回ることは可能だ。
同じ期待値ならばと等価のトレンドに順応するか、流れに抗ってリスク軽減のために従来のスタイルにこだわるか…これはどちらが正しということでもないだろう。結局はホールの見極めなどを含めた当人の腕次第だろうから。しかし…全店等価営業になった地域のパチプロさんはどのように対応したか気になるところではあるのだが。
余談ながら、10年近く前の再開発前の有楽町駅ガード下の一角は、別店舗ながら最新台と昭和の珍古台が入り乱れたパチンコパラダイスだった。レトロ感抜群でパチンコ本来の楽しさである"玉の動き"を堪能できる2円交換の珍古台を打ちに足繁く通ったものだ。わしは昭和の珍古台、路上営業の靴磨き屋さん、そして、すぐ近くは銀座だというのに裏路地の薄暗く怪しげな雰囲気を併せ持つ有楽町が大好きだった。
そんな有楽町も含め、かつて都市部が勝ちやすかった理由は、選択肢が広かったということに尽きるだろう。店舗の多さに加え、それぞれのホールに独自の個性もあった。低換金でガンガン回す店、羽根物など個性的な台に力を入れる店、高換金をウリにしている店など様々あったため、自分のスタイルや台の特性に応じた選択肢が豊富にあった。しかも移動も楽だったため、数件のホールを回れば容易に打てる台を見つけることができたのだ。
たまに情報交換をする茨城県の郡部がテリトリーのパチプロは、「スカを喰った際の移動時間とガソリン代がバカにならない」と良くボヤいている。都市部であればそこまでは感じないだろう。まぁわしはスカを喰った際、次の一手を打たずにヨボヨボと帰路につくわけだが。茨城プロより立ち回り可能のホール数が多いのに、打つ努力を怠っているのは何たるザマか…。
しかしそろそろそうも言ってられない。スカを喰う頻度も多くなっているから、新規ホールの開拓から始めても良い時期なのかもしれない。どんな世界でもピンチをチャンスに変えるのがプロの真髄だと思う。かなりダルいが…少し頑張ってみようかな。