闇7-奪われた出玉ver.-
プロローグ

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始まっちまったですよ。文字通り地獄が。

皆様ご無沙汰しております、パチスロ7編集・四帖半です。

「パチ&スロ必勝本(旧超速必勝本SP)」を長年ご愛用なさってる方や、毎月26日発売の「パチスロ7」をご愛読頂いている方はもしかしたらご存知かもしれませんが、俺はアレです。しがないイチ漫画編集者でございます。

ただの編集がどーしてコラム書いてんだよコラ、という疑問、ごもっともで御座います。とゆーか俺もそう思います。てか俺が一番強くそう思っています。

この文章は――そこらへんの不条理を解き明かすと同時に、このアホ企画がどういった経緯で始まったのかを記すのが主たる目的であります。

また、次週より始まる本戦のプロローグとして読み進めて頂ければ、俺が…俺という人間がいかに過酷すぎる運命に翻弄されてもなお諦めずに世の理不尽と戦っているか、ということが十二分にご理解頂けるかと思います。

かつて「神7」「神7 Revenge」という、とんでもないルールの実戦コラムを何者かの陰謀によってやらされる羽目になったワケですが、それがいわゆるケチのつきはじめってヤツでして、現在ホールをめっさ賑わせている『アナザーゴッドハーデス-奪われたZEUSver.-』が導入されるちょいと前、今度のGODはどんなだろうね、きっとこうかしら、いいえきっとこんなだよキャッキャッ、などと編集部の面々がワクワクしながらその仕様を無邪気に予想していた頃、俺はと言えばまた厄介極まりないアホ企画に巻き込まれないように気をつけようという一心、触らぬ神に祟りナシの精神でもって、同フロア内のマンガ編集部すぐ後ろに存在するパチ&スロ必勝本チームに、自分の存在を気づかれないように生きていたのでした。

が、ダメでした。

「やるよ闇7」

その声が編集部に響いた時、俺は「なんだか聞きなれない言葉が向こう側から聞こえてきたけど俺にはきっと関係ないし、関係ない人間が興味深げにソレって何? みたいなことを尋ねたらソレはもう因果律に囚われることと同義だから危ない。というか言葉が聞こえたことを勘付かれることすら危険だし、何ならその言葉が聞こえた事実自体が非常なる危険性を孕んでいるうえに、それについてこんなにも考えてしまっている状況そのものが大変な事態を呼び起こす可能性すらあるので何も聞こえなかった。俺は何も聞いていない。記憶を消す! 俺にはそれが容易くできる」とか考えていたら肩を叩かれた。

振り向くと、そこにはしゃっくがいた。

しゃっくとは…パチ&スロ必勝本のスタッフであり、かつての「神7」「神7 Revenge」では、俺とともに実戦コラム企画に参加させられた過去を持つ男です。実戦の際には、多大な迷惑、及び精神的・経済的損失を与えられたことだけ追記しておく。

そんな男から飛び出た不吉な言葉が「闇7やるよ」だったのである。

俺は非常に小さい声でしゃっくを叱責した。

俺「しっ! バカ野郎!『神7』を連想させるような言葉をこの時期に軽々と口にするんじゃないよ! どこで誰が聞いてるかわからんのだぞ! ああ、そういえばハーデスが出たから『神7 ザ・ヘル』やるかぁ〜みたいな流れになったらお前コラ、お前、超どうすんだよっ!! それにな、誰も聞いていなかったとしてもだよ、言霊ってのがあってだな、お前のその不用意な発言が巡り巡ってアホ企画の誕生を招くってことがあるってことを俺はこないだ複雑系の学術書を読んだ夢を見たから予測できるんだよ、バタフライエフェクトっつてだな…」

しゃっく(以下、し)「話が長いです、四帖半先輩」

しゃっくが言う。続けて、

し「『神7 ザ・ヘル』じゃないですよ、『闇7』です」

などと言う。

俺「だからそーゆー変なワードを空気中に放つんじゃないよ!」

し「『闇7』やりますから。これは決定事項ですから」

俺は愕然とした。どうやら知らない間に『闇7』なる企画が進行していて、それはどうも俺としゃっくに関わることらしい。

この時期に勃発する企画なのだから、つまりはハーデス関連の実戦コラム企画であることは想像に難くない。だがしかし、それよりもっと重大なヤバさ、それはしゃっくが企画を受け入れていることである。

コイツ、重すぎる現実を受け止めきれずに感情ってモンが消えちまったのか…。もっとこう、抵抗するとかあるだろうに。あんなトラウマこしらえる可能性激高の実戦、やらねえですむならやらねえほうがいいんだよ!

と言うワケで俺は、しゃっくの説得にあたることにした。

俺「しゃっく、諦めるのは早い。『闇7』ってのが具体的に何を指すのかは知らんけど、きっと脳を煮沸された奴が考えた非人道的な実戦企画なんだろうさ。いいか、しゃっく。俺たちばかりがいつもあんなアホ企画に巻き込まれる謂れはこれっぽっちもねぇんだ。お前ってヤツは運命に翻弄されっぱなしの人生を歩んでいるもんだから、可哀そうに、言われたことに粛々と従うだけの哀れなる羊根性が染みついてんのかもしれない。でもな、俺は狼だから。自分の運命は自分で切り拓く。NOと言える日本人だから俺は。具体的には『闇7』とかいう企画について知らぬ存ぜぬで通す。のらりくらりと時間を稼ごう。それが無理なら…うん、そうだな、泣いちゃおう。中年二人が泣けばアレだぞ。引くぞ、普通の人間は。だから泣いて懇願しよう、もう出来ません! って。俺、舌を消毒する薬買ってくるから二人で靴、舐めるか。舐めよう、靴」

し「僕はやりませんよ?」

俺「えっ舐めないの? ああ、企画をか! そうだよ、その意気だ!」

し「僕はやりませんけど、四帖半さんはやるんですよ?」

俺「ん?」

し「今回の企画立案、運営は僕です。僕させる人、アナタやる人」

なんてこった…。事態は予想を超えて酷かった。俺はしゃっくの靴を一瞬見た。汚かった。



数日後――。編集部の一角に6人の男が集った。

俺。
ライター・松真ユウ。
パチスロ必勝本編集部員・まー棒。
パチスロ7編集・ノリオ。
パチ&スロ必勝本スタッフ・オペル佐々木。
そして、しゃっく。

しゃっくが口を開く。

し「皆さん、今から『闇7』のルール説明をさせていただきます、準備はいいですか?」

俺は冷静にこう答える。

俺「準備がいいワケないだろう、しゃっく。今からでも遅くない、こんな馬鹿げた企画、取り下げるんだ。お前だって当事者だったんだからわかるだろ? 不幸を生むだけさ、厳しいだけのルールでスロを打つなんてのは。それを知ってるお前が何だってこんな…」

し「復讐ですよ。当たり前じゃないですか。僕は待っていたんですよ、GODシリーズの続編が出るのをね。ここにいる皆、あっオペルさんは除いてですが…ご存じないでしょうね。我がケータイサイトチームではですね…企画は言った者勝ちなんですよ。一番最初に口に出したものが責任者。だからね今回、ハーデスが出るって話が出た瞬間、そう、まさに会議で『おっミズホからアナザーゴッ』くらいの時に言いましたもの、『僕、闇7やります!』ってね…早かったな〜あの反応…」

俺「復讐っつーのはわかるよ、俺たちがやらされた企画は確かにキツかった。それを強いたヤツらに煮え湯を飲ませたい…その気持ちは自然だと思うけども、それだったらココにいるオペルだけが対象だろう。それじゃ企画にならねえってんなら、まー棒なりノリオなり呼べているんだからコトは済んでるじゃねえかよ。何でかつての戦友であるところの俺と松真まで巻き込んでんだよ!? 最悪松真はイイよ、前回からの参加だからな。でもお前、俺は一番最初の企画から一緒にやってきた仲間…っていうか最も尊敬すべき先輩だろうが俺は! 戦場で泣きながら小便を漏らすお前をいつだって大きな背中に隠してやった大恩人だろうが! 孫悟飯で言うところのピッコロさんレベルのハズじゃねえのか、俺はあああああああああっ!」

し「うるさい!」

俺「てめっ…」

まー棒(以下、ま)「うるさい」

俺「えっ?」

松真ユウ(以下、松)「うるさいっす」

俺「もン?」

オペル佐々木(以下、オ)「うるさいよ」

俺「うるさいの?」

オ「やいやい言うなよ、決まったことなんだから。しゃっくはさ、四帖半が苦しむところを見るのも含めて復讐が完了するって言っていたよ。前の企画の時に四帖半としゃっくと松真が苦しんでるのを見て喜んでる人たち…ま、オレとか読者さんとかね。それと同じ高みに立ちたいんだと。それでこそ自分が安全である愉悦を噛み締められるんだと」

俺「ズ…ズークーじゃないですか。業界用語で言うところのズークーの発想じゃねえか…まぁいい、何にせよ俺はクズ野郎の企画に乗っかる道理が皆無です。とにかく俺は断る。お断りします。はーい失礼しますぅー」

ま「逃げるってことでいい?」

俺「はぁ?」

オ「チキンってことでOK?」

悪い癖が出てしまった。バック・トゥ・ザ・フューチャーのマーティばりに「チキン」という言葉に反応してしまう俺だからして、気づけば「おい、僕のことをチキンって2度と言うな…」と言いながら俺は企画に乗ることを了承してしまった。

ここらへんがその、向う見ずなとこがワイルドで素敵な男、って感じで女性からの好感度がアップするポイントです。

し「やるって言いましたね。覆えせませんよ」

俺「俺が今まで一度でも発言を覆したことがあったか?」

ノリオ(以下、ノ)「超あるんじゃないスか」

俺「急に出てくるな! 何だお前、お前、同じ班の後輩が言ったらすげー真実味がある感じに聞こえるじゃねえか」

ノ「だって、漫画家さんに早めに上げてもらった原稿、明日までに入稿するって言った10分後に満腹だから眠いとか言って…」

俺「静かになさい! 言ってイイことと悪いことの区別、つかないか〜。ノリオくん」

ま「まぁとにかくさ、さっさとルール説明しちゃってよ」

オ「そうだよ、俺も暇じゃないからさ、仕事終わらせて早く嫁と子供の顔見なきゃならないんだから」

俺「あの…なんでそんな軽いノリなの? もしかしてちょっと面白いんじゃねーのとか思ってるんじゃないよね? あんな無理すぎるノリ打ちが…」

し「ノリ打ちじゃないですよ? 出玉総取りです」

ノリじゃない?? 出玉総取り????

…ますます。ますます事態は予測を超えて凄惨そのものって感じになってきた。

ルールが読み上げられる。結びにしゃっくが「以上、地獄のルールが7つあるので『闇7』なのです。なお、プロローグの配信はミズホにかけまして3月24日とします」などとのたまっている。やかましいよ。上手くも何ともねえんだよっ! と思ったが、そんなことよりデカい問題がある。ルールである。このルールがまた、人を馬鹿にしきっているのである。

予選で「出玉の」上位3人が決勝に行く。収支は問わない、だって。

つまりだよ? イマジンしてほしい。例えば俺が10万投資しました、と。そこから何だか奇跡が起きて(PGG引くとか)、5000枚出ました、と。その5000枚は一旦プールされ、ただ決勝に行ける可能性が高いだけなんだって! アハ! 笑っちゃう!!

そんで、決勝に行って、2万投資から4000枚出たとしようか。でも他のヤツが4万投資からの5000枚出したとしようか。その場合、ソイツがだよ、俺が出した9000枚(予選5000枚+決勝4000枚)を全部持っていくんだって!! ファニー!!! ほんで俺は2戦やって12万負けだって!!! ロックだな!!

馬鹿かぁっ!!!!!!!

ケーススタディをもう一発しておこうか。

予選で…


→1000円投資の5000枚流しで4444G以上回したのでヤメ(約10万勝ち)

松真ユウ
→10万投資の1000枚流しで投資上限に達したのでヤメ(約8万負け)

まー棒
→5万投資の2500枚流しで4444G以上回したのでヤメ(プラマイゼロ)

オペル佐々木
→10万投資で出玉ナシ、投資上限に達したためヤメ(10万負け)

ノリオ
→3000円で一時的に5000枚出るがほぼノマれ150枚流し。4444G以上回したのでヤメ(プラマイゼロ)

…と、こうなったとしよう。この段階で決勝に行ける者は俺(5000枚流し)と松真(1000枚流し)とまー棒(2500枚流し)の3人となる。それで決勝での出玉が…


→10万投資で出玉ナシ(10万負け)

まー棒
→3万投資で3000枚(3万勝ち)

松真
→10万投資で3500枚(3万負け)

……この場合の優勝は、決勝での出玉が一番多い松真となる。

松真の収支は、予選からのプール出玉8650枚+決勝での全出玉6500枚、合わせて15150枚となり、そこから自分の投資額20万(予選10万+決勝10万)を引くから結局は10万勝ち…だって。何コレ。ホントは2戦で13万負けてんのに。

さらに、上の予選で「10万投資で出玉ゼロ→ヤメ」としたオペルだが、実はそう簡単な問題ではなく、あくまで出玉でのみ決勝の切符を手に出来るため、10万以上の追加投資をしてでも、まとまった出玉を確保せねばならないという心理が働く。

つまり、ヤメてしまえば損が確定するが、松真のように優勝さえすれば負け分補填どころか「浮き」まである。という誘惑が渦巻く。株で身を滅ぼす人はこんな感じなんでしょうね知らんけど。

さらに! 罰ゲームっつーエゲつない措置もあるので、上記のノリオのように4444Gさえ回していて、かつ自分よりも先に実戦をしている人間の出玉が把握できていれば150枚を流すことで罰ゲームが回避できる(この場合オペルが出玉ゼロ=ビリなので罰ゲーム確定)。

そう、勘の良い読者ならばもうおわかりでしょうが、この予選、打つ順番が超重要なのである。

これらのような様々なシチュエーションを瞬時に考えた俺は…あっ、「瞬時に考えた」はまぁ嘘ですけど、とにかく考えた俺は一つの結論に辿り着いた。すなわち、「マジでイヤなんですけど…」である。

そんなことはお構いなしにしゃっくが嬉しそうに言う。

し「じゃあそろそろ順番決めましょうか!」

俺は不思議だった。どいつもこいつも自分が勝つ気でいやがる。まー棒に至っては「勝てばいいんでしょ勝てば」とか言っている。

ノリオなんか「これで優勝すればデカいっすよ〜ふぁう」とか言っている。

オペルも「予選では投資し過ぎず出し過ぎず…で決勝で本気出せば…」とか言っている。

松真は喋らない。

バカばっかりでガッカリだわ。予選で全員が10万投資の300枚〜100枚流しだったとしてみ?

ほんで決勝で3人が10万投資の最高出玉が1000枚だったらどーすんだよっ!!!

優勝したけど18万負け、みたいなことになるんだぞ???

消えた年金問題どころじゃねえわいや!!!

ハーデスに限ってそんなことはない? ってか? わからんじゃない、わからんじゃないの、そんなの。

でもダメだ、もう欲にまみれた俗人どもに俺の言葉は届かない。しゃっくがメダパニだかコンフュだか唱えたっぽい。DQ派にもFF派にも配慮する俺のような聡明さが、コイツらには足りなさすぎる。

だから、俺は諦めた。こうなったらせめて順番でケツの方、出来れば5番目、悪くても4番あたりを引くしかない。スロ屋の開店時に20人しかいないのに40番の整理券を引いたことのあるこの右手が唸りを上げる時が来たのだな。オラッ!





「1番」





俺は普通のテンションで、やり直そうか、と言ってみた。こんくらいのテンションで言えば、「だね」的な返事が来るハズだったがダメだった。「いや無理でしょ」みたいな声が虚ろに響いた。

結果、

1番→四帖半
2番→ノリオ
3番→松真ユウ
4番→オペル佐々木
5番→まー棒

こーなった。

「ああ、1番だった人がついでにプロローグも書いてくださいね」としゃっくが言う。

だから、俺、いま、これ、書いてる(朝5時)。

腹が立ちます。無性に…腹が立ってきました。こうなったらもう俺が優勝して、俺以外のドサンピンどもをキャン言わすしかない。予選の初戦で3万枚とか出して、全員の心をポッキリやるしかない。

「この人にはかなわない、2度と刃向おうなどとは思わないようにしよう」ってくらいの実力差を見せれば、根がおサルに近い感じに出来ている他の4人など即座に服従のポーズを見せるに決まっている。

それしかねえ。それしかねえけど、一応、舌を消毒する薬だけ常備しようと思います。
アツいぜ
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